日本ダービー2025の概要
開催日
2025年6月1日(日)
グレード
GⅠ・3歳牡牝
コース
東京芝2400m
概要と歴史
3歳サラブレッドの頂点を決める最高峰のGⅠ競走にして、牡馬クラシックの二冠目にあたるレース。「日本(にっぽん)ダービー」はあくまで副称であり正式なレース名は「東京優駿」。1932年にイギリスのダービーを範として創設された。2025年の1着賞金は3億円。元々が優秀な繁殖馬の選定を目的とするレースのため、セン馬(去勢された牡馬)は出走できない。
日本のチャンピオンコースたる東京芝2400mを舞台とするが、Cコース替わり初週ゆえのトラックバイアスがあったり、一発を狙うジョッキーたちの奇策により極端な展開になったりと、意外と順当には決まらないレースでもある。
日本ダービー2025の登録馬
登録馬一覧
登録馬20頭
エムズ
エリキング
カラマティアノス
クロワデュノール
サトノシャイニング
ショウヘイ
ジュンアサヒソラ
ジョバンニ
トッピボーン
ドラゴンブースト
ニシノエージェント
ファイアンクランツ
ファウストラーゼン
ファンダム
ホウオウアートマン
マイユニバース
マスカレードボール
ミュージアムマイル
リラエンブレム
レディネス
日本ダービーの基本データ(過去10年)
人気と配当の傾向

1番人気は【2-3-2-3】。勝った2頭はいずれも単勝オッズ1倍台のコントレイルとドゥラメンテで、裏を返せばそれほど圧倒的な存在でなければ取りこぼしはある。
連対馬20頭中18頭は5番人気以内に収まっているが、昨年は9番人気のダノンデサイルが優勝し、2019年には12番人気で単勝オッズ93.1倍の伏兵・ロジャーバローズが勝利した。
平均馬連配当は3301円。最高馬連配当は1万1200円(19年ロジャーバローズ→ダノンキングリー)、最低馬連配当は270円(20年コントレイル→サリオス)。
枠順と脚質の傾向

ダービーはCコース初週のため内枠有利と言われることが多い。実際にデータで見ると好走率自体に大差はないが、先に名前の挙がったロジャーバローズやダノンデサイルなど、人気薄で好走した馬はほとんどが内枠。回収率ベースでは差が開いている。逆に「5~8枠かつ単勝30倍以上」の馬は【0-0-1-60】だ。

脚質についても似たような傾向で、好走率そのものは前と後ろでそんなに差がない。ただ、大穴を開けたコズミックフォース(4角2番手)、ロジャーバローズ(同2番手)、ダノンデサイル(同3番手)など、穴は基本的に前から出ている。そのため回収率は先行勢の方がずいぶん高い。
前走について
まず先に書いておくと、好走馬が出ているローテは皐月賞、京都新聞杯、毎日杯、青葉賞、プリンシパルSの5レースだけ。それ以外はNHKマイルCの【0-0-0-16】など合計で【0-0-0-25】。検討対象外としていいだろう。
皐月賞組は【8-9-7-74】複勝率24.5%で、好走馬の大半がここから出ている。着順で言うと8着以内が【7-9-7-42】で9着以下【0-0-0-32】とハッキリしたボーダーラインが見える。なお昨年ダノンデサイルは皐月賞競走除外だった。
また、皐月賞で上がり5位以内だった馬は【7-7-4-27】複勝率40.0%で、同6位以下が【0-2-3-47】複勝率9.6%。末脚上位の勢力を重視したい。
青葉賞組は【0-0-2-19】。勝ち馬に限っても【0-0-1-8】で、平均4.9番人気と毎年そこそこ穴人気するわりに結果が出ない。今年から本番まで中4週に改められたが、それだけでドラスティックな変化があるかは何とも言えない。
京都新聞杯は【1-1-0-15】。その2着馬ロジャーバローズが大穴を開けた。こちらも勝ち馬は【0-1-0-8】で青葉賞と大差なし。ただし平均人気は9.6番人気なので、青葉賞組ほど過大評価はされない傾向にある。
ほか、毎日杯組【1-0-0-7】はシャフリヤールが勝ったローテ。プリンシパルS組は【0-0-1-8】。好走率は高くないが、勝ち馬でも平均13.1番人気と最も軽視される前哨戦ではある。
日本ダービー2025の参考レース
参考レース① 皐月賞
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:やや内有利、高速
展開:ミドル、早仕掛け
→馬場は前日に続いて高速、外を回った馬に厳しいバイアス。1000m通過59.3秒はミドルか遅めの部類だが、ファウストラーゼンがマクって(向かい風のはずの)残り1000mから11.4-11.5を踏んだ。早仕掛けで先に動いた馬ほどキツい展開になった。内目で脚を溜めた差し馬が有利なレースだったと評価する。
1着ミュージアムマイル【鞍上巧い】
道中は中団馬群のなか、内から2車線目あたりのラインを追走。マクりが入っても慌てず騒がず、外に出そうとしたジョバンニを弾き返す。4角まで内目を通し、出口でサトノシャイニングを利用しながら外へ持ち出した。上手い。直線は早仕掛けで苦しくなったクロワデュノールを狙い撃つように差し切った。展開が味方したのは確かだが、とはいえGⅠでの着差0.3秒はそこそこ決定的。ダービーでさらにパフォーマンスを上げるタイプではないと思うが、もちろん有力候補ではある。
2着クロワデュノール【安全策が祟って】
前半は好位の外目を追走。向正面でファウストラーゼンやアロヒアリイらがマクってくると、包まれるのを恐れたか、ドラゴンブーストの外に切り替えて前を追いかけた。4角は内から4車線目を回して進出し、直線は一時先頭に立つも最後は甘くなった。勝ち馬はおろか後続にも差されそうになりながら、そこはカラくも踏ん張った。
トラックバイアスと展開に完全逆行するレースぶりで、騎乗は決して褒められたものではない。ただ、GⅠでの単勝1倍台、ホープフルSも安全策で勝っているだけに、進路確保を最優先したくなる心理は分かる。鞍上批判はできない。強い走りはした。ダービーでは逆転できる。
3着マスカレードボール【序盤不利】
スタートはもっさり。1コーナーまでエリキングと何度も接触する不利。初角では(押されたのかもしれないが)左に膨れてフクノブルーレイクに迷惑をかけた。やはり右回りは下手。ただし馬場とトラックバイアスには恵まれて直線は伸びてきた。左回りの東京ならもっとパフォーマンスが上がる可能性はあり、日本ダービーはまだ逆転の目を残している。
4着ジョバンニ【向正面不利】
序盤は内から2車線目、クロワデュノールの後ろを追走。向正面クロワデュノールが外へ動いたアオりでやや狭くなり、外に出そうとするとミュージアムマイルに押し戻されてブレーキを踏んだ。4角はミュージアムマイルの1頭分外を回して追ってきたが4着まで。結果論だが、勝ち馬をコーナーで外からかわしにいく必要はなく、背後をついてくればもうひとつ上の着順があったかも。
5着サトノシャイニング【枠順不利、初角不利】
外枠が祟って1コーナーは内から4~5車線目での進入。そこに内からエリキング→マスカレードボール→フクノブルーレイク→サトノシャイニングの玉突き不利があった。向正面でもクロワデュノールに張ってこられて終始外を回った。トラックバイアス的にも物理的にも不利が多すぎた。これで5着確保はむしろ立派。
10着カラマティアノス【インに潜るも】
外枠から折り合いをつけつつインにスルスルと潜っていき、2角までには内ラチ沿いを取り切っていた。そのままじっくり脚を溜めてロスなく直線に向いたが、前に迫るほどの伸びはなかった。上手に乗った上で現状は力負け。
11着エリキング【接触多く】
最初のポジション争いでマスカレードボールと何度も接触。イン差しに徹したがあまり伸びなかった。完敗。
13着ニシノエージェント【イン追走も】
最内枠からイン中団の経済コースを追走。ロスなく立ち回ったが伸びなかった。相手が強かった。
15着ファウストラーゼン【マクリ不発】
序盤は離れた最後方。2コーナーから向正面にかけてマクりを打った。弥生賞は同様のキツい展開でも残れたが、今回は直線に向くとあっさり飲み込まれていった。軽い馬場だとこんなものなのか。ダービー候補からは一歩後退。良馬場でGⅠチャンスがあるとすれば菊花賞だろう。
17着ドラゴンブースト【仕掛け早い】
枠なりで内に入れることができず、序盤は馬群の大外を回される。向正面でファウストラーゼンとアロヒアリイが動くと呼応して自身も脚を使った。早仕掛けで最後はバタバタになった。
参考レース② 青葉賞
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:フラット~やや内有利
展開:ミドル、3番手以下実質ややスロー
→2回東京開幕日でも極端に内がいい馬場ではなかった。なお天候発表は曇りだが、レース中は雨が降っていた。ガルダイアが後続を離して逃げ、前半1000mは59.9秒。ただしその後13.3が入るなど中だるみが大きく、ラストのレースラップは11.9-11.3-11.2。先行した2~3頭を除く馬群は実質ややスローくらいか。おおむね能力通りに決着したレースと評価する。
2着ファイアンクランツ【外々回って】
内に潜れず道中は中団の外を回される競馬。直線はしぶとく伸びてきたが、自分の後ろにいたエネルジコに差し切られた。(少なくともこういう瞬発力勝負においては)クビ差以上の力差を感じる敗戦。
6着ホウオウアートマン【キレ負け】
実質スローの集団の先頭付近にいて、展開としては理想的。直線に向いて一時は先頭に並ぶ場面も作ったが、最後の追い比べで0.3秒だけ見劣った。勝った2戦はどちらも渋った馬場で上がりを要したレース。キレ味比べでは分が悪いのかも。
参考レース③ 毎日杯
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:やや内有利
展開:スロー
→ガルダイアが逃げて1000m通過60.5秒。レース上がり3Fが33.3秒が出たように、馬場の軽さを考えるとスローぺースの部類だった。イン前にいた馬が恵まれたレースと評価する。
1着ファンダム【上がり32.5秒の豪脚】
トップスタートを切って最初の数完歩は先頭に立つくらいだったが、鞍上が意図的に下げて後方のインへ。4角も内目を通し、直線だけ抜群の手応えで外に持ち出す。内回りとの合流点を過ぎたあたりで追い出すと強烈な末脚を繰り出し、粘るガルダイアをあっさり差し切った。
勝ち時計1:45.9は同日君子蘭賞より遅いものだが、毎日杯としては歴代2位の好記録。1800m重賞で上がり32.5秒という記録もインパクト大だった。2400mが合う合わないの問題はあるが、レース単体のパフォーマンスは「GⅠ級」という表現が相応しい
7着リラエンブレム【キレ負け?】
好スタートから道中は中団外を追走。スローで引っかかる馬が多い中、比較的我慢ができていた方だが、直線いざ追い出して全く伸びなかった。新馬戦、シンザン記念と違って33秒台前半が必要な極限の瞬発力勝負に対応できなかったものと思われる。