「底上げ理論」とは?
馬券というゲームが難しい理由は色々と挙げられるが、根本的な問題として結局「控除率があるから」に帰着する。100円買った時点で(券種にもよるが)約25円失っているわけだから、その分を予想の腕でカバーしなければならない。回収率が80%以上100%未満の方は「控除率に負けている」と表現していいくらいだ。
この「25%」をどう埋めるかを考えたものが、今回紹介する「底上げ理論」である。
これは「3着内に来る確率が限りなく100%に近い馬」と「3着内に来る確率が限りなく0%に近い馬」が存在するレースに絞って期待値のベースを底上げする……という発想だ。
例として2023年のジャパンC、イクイノックスの引退レースとなった一戦を取り上げる。あのレースで「イクイノックス軸、単勝100倍超の馬を消した3連複流し」は合成オッズ0.95倍だった。ちなみにリバティアイランドとの2頭軸なら合成1.31倍。つまり、ほぼ起こり得ない目を消すだけで、実質的に期待値のベースが(払戻率の0.75ではなく)0.95や1.31になったのだ。信頼できる存在、消せる馬が全くいないレースより、だいぶ有利な地点からスタートできる。
ほかにも期待値の「底上げ」ができたと思われるGⅠレースの例を下表に示す。
我々馬券野郎は回収率100%超えを目指して日々悪戦苦闘するわけだが、たとえば昨年は他のレースに一切触らず、ジャパンCの「ドウデュース1頭軸→相手は単勝100倍未満全頭」の3連複だけ資金配分して買えばそれで回収率133%だった。まあこれは極論か。
例は分かりやすいようにGⅠで挙げたが、平場でも似たようなシチュエーションは少なくない。このように期待値の底上げができる“チャンスレース”に集中すれば、驚くような穴狙いをせずとも100%を超えることは計算上可能だ。わたしはパチンコやスロットについて門外漢だが、いわゆる「設定が高い台に座る」に近いものがあると思う。あとはそのまま1頭軸流しでもいいし、「起こりうる目」と考えた中から買い目を決めてもよい。
世の馬券ノウハウには「他人と違うことをせよ」と述べ、穴狙いを賛美するものが多いように思うが、これは対極の考え方。「信頼に足る人気馬」と「完全ノーマークでいい人気薄」を適切に見極めることで勝利に近づこう、という方策だ。
有利な戦場を選んで控除率のハンデを軽減し、戦いを優勢に進める。これが「底上げ理論」である。真の勇者ことアグネスデジタルには怒られそうだが、興味を持った方は一度試してみてはいかがだろう。