はじめに
今年の3月に「現3歳世代のハイレベル戦まとめ」(https://keiba-night.com/kaiko/5104)という記事を書いた。世代限定戦を全て抽出して内容を見るという莫大な作業だったが、クラシック開始前の段階で、まだそこまで話題になっていない素質馬を発掘することができた。
当時取り上げたうち、その後出世した馬をざっと挙げると以下の通り(※記事執筆時点で既に重賞を勝っていた馬を除く)。
ボンドガール(秋華賞2着)
ダノンエアズロック(プリンシパルS)
アマンテビアンコ(羽田盃)
ラムジェット(東京ダービー)
サンライズジパング(不来方賞、みやこS)
ショウナンラプンタ(青葉賞2着)
ダノンマッキンリー(ファルコンS、スワンS)
サトノフェニックス(レパードS2着)
オールナット
ミッキーファイト(レパードS、JDC2着)
アーバンシック(セントライト記念、菊花賞)
エコロブルーム(NZT)
トロヴァトーレ
ウィンドフォール
エートラックス(兵庫CS)
ベラジオボンド
テーオーパスワード(KYダービー5着)
ヘデントール(菊花賞2着)
ミラビリスマジック
ジョーローリット
ソンシ
メイショウタバル(毎日杯、神戸新聞杯)
ナナオ
ディスペランツァ(アーリントンC)
これだけの釣果があれば十分だろう。
というわけで今年もやる。今回は「阪神JF終了時点」の情報を基にした。ホープフルS後の方がキリはいいのだが、ちょっと有馬記念週~東京大賞典~年末年始にこの作業量は割けないので、中途半端なタイミングになる。
昨年同様「ハイレベル戦」の定義は以下のように定めた。
・出走馬のその後の活躍が目覚ましいもの
・勝ち時計、ラップ的な強調点があるもの
・ほか、わたしのセンサーに引っかかったもの
以上を踏まえて本編へ。数が多いので月ごとに区切って紹介する。
ちなみに文句なしで「超ハイレベル」と思えるものもあれば、取り上げるか否かの当落線上だったレースもある。そのあたりは短評の温度感で察していただければと思うが、特にレベルが高いと評価したものは赤太字にしておく。
(※勝ち上がり状況等の情報は24年12月8日終了時点)
ハイレベル戦一覧
6月のハイレベル戦:16レース
◆新馬(ダノンフェアレディ)
勝ち時計1:33.8は2歳6月のマイル新馬としてはグランアレグリア(1:33.6)に次ぐ歴代2位の記録。後半1000mも58.1秒と上々。直前の3歳未勝利で1:32.6が出る超高速馬場だったのも事実だが、それを差し引いても優秀である。2着ショウナンザナドゥは次走で5馬身差V、ほか4着馬、10着馬がダートに回って勝ち上がり。
◆新馬・牝(ミリオンローズ)
1000m通過62.7秒の超スローペースで全体時計は目立たないが、ラスト11.0-10.9の加速ラップ。勝ち馬は次走OP2着、2着エンブロイダリーはその後2勝、3-4着馬も既に勝ち上がった。
◆新馬(サニーサルサ)
高速馬場と暴走気味のハイペースが重なったものだが、勝ち時計1:34.1はこの時期の2歳戦としては速い。2着ジャルディニエはその後連勝、5着、8着、10着馬が勝ち上がった。
◆新馬(コートアリシアン)
勝ち時計1:35.1自体もこの時期の2歳馬としては優秀だが、後半5F12.0-11.9-11.5-10.9-11.4の57.7秒という数字がすごい。「2歳7月以前」「1600m以上」「レース上がり5F57.9秒以下」を満たしたのはワグネリアン、グランアレグリア、セリフォス、ジオグリフ、リバティアイランド、ボンドガールに次ぐ7例目(次のクロワデュノールが8例目)。5馬身離れた2着以下をどこまで評価するかは微妙だが、勝ち馬は阪神JF6着で見限る器ではない。
◆新馬(クロワデュノール)
勝ち時計1:46.7は2歳6月の芝1800m戦としては史上最速のタイム。従来の最速は阪神でレッドベルアームが出した1:47.9なので、それを1.2秒も上回る記録だった。後半1000mは11.9-11.5-11.3-11.1-11.5の57.3秒で、こちらも前記した「2歳7月以前」「1600m以上」「レース上がり5F57.9秒以下」に該当する。勝ち馬は東スポ杯2歳S勝ち、2着馬は次走圧勝、6着馬が次走勝利。
◆新馬(ハッピーマン)
勝ち馬はその後兵庫JG制覇。2着アメリカンビキニは次走1000mに短縮してレコード勝ち、ヤマボウシ賞と連勝した。
◆新馬(クレーキング)
勝ち馬はカトレアS2着。2,3,6,7着馬も既に勝ち上がっている。ちなみに中舘厩舎のナダル産駒ワンツー。
◆新馬(リリーフィールド)
勝ち時計59.0秒は函館ダ1000mの新馬・良馬場としては史上最速のタイムだった。勝ち馬は芝に転じてもみじSを勝ち、2着馬が次走勝ち上がり。
◆新馬(トータルクラリティ)
マイルにして1000m通過62.4秒のスローペース。全体時計は平凡だがラスト11.4-10.9の加速ラップだった。勝ち馬は新潟2歳Sを制覇。2-3着馬は未勝利だが、4,5,7着馬はダートに転じて勝ち上がり。
◆新馬(プリティディーヴァ)
勝ち馬はダリア賞制覇。出走12頭中2頭はまだ次走を向かえていないが、残る10頭のうち8頭が次のレースで馬券に絡んだ。4,5,7,11着馬が勝ち上がり。
◆未勝利(ショウナンザナドゥ)
勝ち時計1:33.5は2歳6月の芝1600m戦レコード。勝ち馬はアルテミスS3着、阪神JF4着。2.0秒差離された3着馬、2.9秒差負けの6着馬がその後勝ち上がった。
◆新馬(モンドデラモーレ)
クロワデュノール組の衝撃に比べてしまうと見劣るが、こちらもそこそこ優秀。ラスト11.4-11.2-11.2と減速せずにまとめている。勝ち馬は札幌2歳S4着。2,4,5,12着馬がその後勝ち上がった。
◆新馬(エリキング)
いわゆる「宝塚新馬」。道悪かつスローペースのため時計は遅いが、ラスト11.8-11.5-11.3の加速ラップだった。勝ち馬は3連勝で京都2歳S制覇。2着馬サラコスティは次走9馬身差の圧勝。8着馬も勝ち上がり。
◆新馬(コスモストーム)
勝ち馬はなでしこ賞勝ち。2,3,6着馬も既に勝ち上がった。
◆新馬(ニタモノドウシ)
福島芝2歳戦で上がり33秒台の勝利はなんと史上3例しかなく、うち2例は1000m戦でのもの。芝1200mを上がり最速で勝ったのはこのニタモノドウシが初めてだった。次走クローバー賞レコード勝ち。2着馬も次走勝ち上がった。ただし3着以下は軒並み苦戦中。
◆新馬(デルアヴァー)
ラスト12.0-11.4の加速ラップ。福島芝1800mの2歳戦でラスト11.4以下は過去3例しかない。3,7,8着馬がその後勝ち上がり。
7月のハイレベル戦:11レース
◆新馬(ジョバンニ)
戦前は評判馬バズアップビート、ダノンシーマの一騎打ちムードだったが、3番人気10.8倍のジョバンニが勝利。ラストが11.6-11.2。小倉芝1800mの2歳新馬でラスト11.2以下が出たのはクロノジェネシス、ピースオブエイト、ドウデュースに次ぐ4例目だった。勝ち馬は野路菊S、京都2歳Sともにエリキングの2着。3着ダノンシーマが次走勝ち上がり。
◆新馬(マジックサンズ)
稍重馬場と1000m通過65.4秒のスローペースもあって全体時計は1:54.0とかなり遅い。ただ、ラストは11.8-11.6の加速ラップだった。勝ち馬は札幌2歳S制覇、2,3,4,6,7着馬が既に勝ち上がっている。
◆未勝利(アメリカンビキニ)
勝ち時計57.2秒は2歳レコード、同日の2勝クラスより0.2秒速い。勝ち馬はヤマボウシ賞も好タイムで勝ち、2着馬も次走勝ち上がり。
◆新馬(ジュンライデン)
勝ち馬は萩S3着。2,3着馬が次走で勝ち上がり、6着馬は1200mに転じて連勝した。
◆新馬(ナチュラルライズ)
1:45.7は札幌ダ1700mの2歳良馬場タイレコード。それもラスト12.3-12.3と減速しないラップでまとめた。勝ち馬はカトレアSも勝利、6馬身離された2着馬も次走で圧勝。3.8秒以上離れた5着、8着馬もその後勝ち上がっている。
◆未勝利(ポッドベイダー)
勝ち時計1:08.8は同日の古馬1勝クラスと0.1秒差。5頭立てながら勝ち馬は福島2歳S制覇、2,3着馬が次走勝利と粒ぞろいだった。
◆新馬(キングスコール)
勝ち時計1:47.8はソダシの札幌2歳Sを0.4秒上回る快レコード。それもソダシの札幌2歳が1000m通過59.2秒のハイペースだったのに対し、こちらは同61.5秒のややスローからラスト11.5-11.7-11.6-11.5と締めてマークした。2着テリオスララは未勝利、萩Sと連勝して阪神JF3着。3着馬も次走で勝ち上がり。
◆未勝利(ミッドナイトゲイル)
7頭立て、勝ち馬が5馬身差で勝ったレースながら、離された2,4,5着馬も次走で勝った。
◆未勝利(エンブロイダリー)
勝ち時計1:45.5の2歳レコード。勝ち馬はサフラン賞をだいぶ乗りへぐりで負けたが、続く1勝クラスを勝った。7馬身離された2着以下は微妙だが、5着メルキオルはその後ダートに転じて連勝。
◆新馬(アルテヴェローチェ)
ラスト11.6-11.5の加速ラップ。勝ち馬はサウジアラビアRCを勝ち、2着ヒシアマンは次走で6馬身差の快勝。ほか5,6着馬も勝ち上がった。
◆新馬(ディアナザール)
勝ち馬は萩S2着でベゴニア賞勝ち。2着馬が次走V。どん詰まり3着だったカラマティアノスはその後2勝。8着馬も既に勝ち上がっている。
8月のハイレベル戦:12レース
◆新馬(シンビリーブ)
ルヴァンスレーヴやエピカリスを出した2歳8月の新潟ダ1800m新馬。勝ち時計1:54.7は優秀で、良馬場の当条件ではエピカリスに次ぐ歴代2位。「良~稍重で1分55秒を切った馬」というくくりだとコンシリエーレ、エピカリス、ルヴァンスレーヴ、ライジンマル、ゴールドレガシー、ミトノオーに次ぐ7頭目となる。ただ、比較対象に挙げた新馬戦に比べるとペースがかなり速く、ラストの減速も大きかった。3-5,11着馬がその後勝ち上がり。
◆未勝利(アルレッキーノ)
新馬戦でクロワデュノール組2着だったアルレッキーノの2戦目。逃げて後半1000m57.8秒を計時し、勝ち時計1:33.3も優秀だった。勝ち馬はサウジアラビアRCでまさかの敗北を喫したが、2,3着馬はその後勝ち上がり。
◆新馬(エイシンワンド)
スローペースとはいえラスト11.0-11.2はなかなかの数字。上位2頭はそのまま小倉2歳Sでもワンツーだった。ほか3,9着馬が勝ち上がり。
◆新馬(カムニャック)
ラスト2Fが10.9-10.9。ただし同日に小倉記念で1:56.5が出た超高速馬場、さらにドスローで上がりが出やすい条件だったことには留意したい。4,5着馬がその後勝ち上がり。
◆新馬(マスカレードボール)
時計やラップにはさほど強調点がないものの、勝ち馬は次走でアイビーSを勝ち、2着馬マイネルチケットはサウジアラビアRC3着、京王杯2歳S2着と重賞でも好走した。7着馬も次走V。
◆新馬(クァンタムウェーブ)
上位2頭が後続を7馬身離すマッチレース。勝ち時計1:54.6は2歳8月以前、良馬場ダ1800m新馬としてはエピカリスに次ぐ2位の時計だった。勝ち馬はもちの木賞を勝って2戦2勝。2着馬は次走V。ただし離れた3着以下はさほど振るっていない。
◆未勝利(ショウナンサムデイ)
新馬戦でキングスコールとテリオスララに阻まれた3着馬ショウナンサムデイの2戦目。ラスト11.3-11.2の加速ラップだった。4,5着馬が次走で勝ち上がり。
◆未勝利(サラコスティ)
1000m通過62.7秒のスローペースとはいえ後半1000m57.7秒は優秀。9馬身差を付けての圧勝だった。書くか迷ったライン。ハイレベルというかサラコスティだけ抜けていた感じで、2着以下には強調点がない。
◆新馬(クラウディアイ)
スローペースで上がりだけの勝負とはいえ、ラスト11.1-11.1はそれなりに目立つ。勝ち馬は京都2歳S3着、2着馬は次走V。
◆未勝利(ロードラビリンス)
勝ち馬はもちの木賞でクァンタムウェーブの2着。2,3,7着馬も次走で勝利した。
◆札幌2歳S(マジックサンズ)
例年通り北海道シリーズで勝ち上がった好素材が集結した一戦。重馬場で全体時計はそこまで目立たないが、2着アルマヴェローチェが次走で阪神JFを勝ち、5着レーヴドロペラが芙蓉S2着、8着ショウナンマクベスが百日草特別を勝った。また外有利のトラックバイアスがあったので、内を回った馬は特に見直し対象。
◆未勝利(アローオブライト)
上位2頭のマッチレースで3着以下が9馬身離れたレース。ラスト12.3-12.1の加速ラップだった。勝ち馬に食らいついたルクソールカフェは次走でレコード勝ち、6,11着馬もその後勝ち上がった。
9月のハイレベル戦:10レース
◆新馬(タイセイカレント)
前後半37.8-33.9のドスローで全体時計は遅く出ているが、勝ち馬はサウジアラビアRC2着、2-4着馬がその後勝ち上がりとメンバーは揃っていた。
◆新馬(パンジャタワー)
勝ち馬は次走京王杯2歳Sを勝利。2着馬が勝ち上がり、3着馬はダート1200mに転じて圧勝ののち、カトレアSでも3着に入った。
◆新馬(ファンダム)
勝ち時計1:32.8は2歳コースレコード。この開催の中山は超高速馬場かつラスト1Fやたら速い数字が出ていたが、とはいえ後半1000m57.5秒、ラスト11.5-10.8なら一定の評価は必要だろう。2-4,7,8着馬が既に勝ち上がり。
◆未勝利(メルキオル)
良馬場での1:53.4はこの時期の2歳としては優秀。ラスト11.8-12.1も鋭く、勝ち馬は次走プラタナス賞も完勝だった。大差2着のニヒトツーゼーアも次走V。
◆新馬(ミリアッドラヴ)
1:23.9は中京ダ1400mの2歳新馬戦史上最速。「重不良馬場を除く当コースの2歳戦」のくくりでも史上3位タイの好タイムだった。勝ち馬はエーデルワイス賞勝ち、2着ダノンフィーゴが次走圧勝、勝ち馬から4.7秒以上離れていた4,8,9着馬も既に勝ち上がっている。
◆野路菊S(エリキング)
ともにハイレベル新馬を勝ったエリキングとジョバンニの対戦。1000m通過64.1秒のあとも12.6-12.5とピッチが上がらず、ラスト11.1-10.9-11.6の3ハロン勝負になった。そのためこのレース自体の数字はさほど目立たないが、1-2着は京都2歳Sでもワンツー、3着ワンモアスマイルもその後1勝クラスで連続2着。少頭数ながらレベルはまずまず。
◆未勝利(ユウトザユウト)
勝ち馬は次走オキザリス賞で3着。4馬身差の2着だったアメリカンステージもその後未勝利と1勝クラスを圧勝した。13,14着馬も次走V。
◆カンナS(エコロジーク)
勝ち時計1:07.2は芝1200mの2歳日本レコード。馬場が速すぎて眉唾な部分もあるが、2着モズナナスターはファンタジーS2着、3着レイピアは福島2歳Sで3着と好走した。
◆ヤマボウシ賞(アメリカンビキニ)
勝ち時計1:23.6は同日の古馬1勝クラスより0.5秒速い時計。本年の中京ダ1400m良馬場では古馬含めて3位タイにあたる。3着クレーキングがカトレアS2着、4着ハッピーマンが兵庫JG制覇、7着コスモストームがなでしこ賞勝ち。
◆新馬(ローランドバローズ)
勝ち時計1:53.5は先に触れたメルキオルと0.1秒差。ラスト13.0-13.3を要してメルキオル戦には見劣るが、悪くはない。勝ち馬はJBC2歳優駿で大敗したが、3,5着馬が次走で勝ち上がった。
10月のハイレベル戦:22レース
◆りんどう賞(ヴーレヴー)
3着馬ダンツエランが次走でファンタジーS制覇。4-6着馬が続く1勝クラスで馬券に絡んでおり、1勝クラスとしてはレベル高め。
◆新馬(テレサ)
開幕週内回りのイン前決着で見た目は地味だが、2,4着馬は次走できっちり勝ち上がった。
◆未勝利(ミュージアムマイル)
勝ち時計1:46.8は京都芝1800mの2歳戦で歴代5位タイの好タイム。しかもラストは11.6-11.5の加速ラップだった。勝ち馬は黄菊賞を勝ち、5着馬も次走で勝ち上がった。
◆未勝利(テーオーエルビス)
圧巻の大差勝ち。勝ち時計1:11.6は同日3勝クラスと0.2秒差。ペース差も加味すると、現時点で古馬の準オープンと同等以上のパフォーマンスといっていい。勝ち馬はカトレアS3着。1.9秒離された2着馬が次走勝利。
◆サウジアラビアRC(アルテヴェローチェ)
稍重馬場ながら勝ち時計1:33.0。東京芝1600mの2歳戦としてはサリオスに次ぐ歴代2位タイの記録が出た。3着マイネルチケットが京王杯2歳Sで2着、4着シンフォーエバーがベゴニア賞で2着。
◆新馬(サトノブリジャール)
こちらも勝ち時計1:46.8で、先にハイレベルと紹介したミュージアムマイルと同値。ただしペース差を考慮するとミュージアムマイル未勝利の方が一枚か二枚くらい上という評価になる。4着馬がその後勝ち上がり。
◆紫菊賞(ビップデイジー)
スローペースで進み、ラスト3F11.4-11.2-11.0の加速ラップ。勝ち馬の上がりは33.3秒だった。京都芝1800mの2歳戦を上がり33.5秒以下で勝った馬は86年以降で8頭。そのうち全体時計が1分50秒を切ったものはエピファネイア、マカヒキ、ブラックスピネル、そして今年のビップデイジーとマディソンガールの5つに限られる。勝ち馬は次走阪神JFでも2着。
◆新馬(ナグルファル)
勝ち馬は続くエリカ賞を4馬身差勝ち。2着馬も次走できっちり勝ち、7着馬はダートに転じて勝ち上がった。
◆未勝利(マテンロウブレイブ)
勝ち馬はもちの木賞で3着。2着馬も次走V。ただ、10馬身離れた3着以下まで評価できる感じではない。
◆未勝利(イミグラントソング)
高速馬場のスローペースという前提があるとはいえ、ラスト10.9-10.9はなかなかインパクトがある数字。5馬身離された2着以下からも次走で3頭が勝利した。
◆新馬(ベンヌ)
勝ち時計1:24.4は当コースの2歳戦、良馬場では2002年のコース改修以降で最速。同日の古馬1勝クラスより0.2秒速かった。勝ち馬はオキザリス賞に出走するも大きく出遅れて12着大敗。実力を出し切っての負けではなく、今後も要注目。
◆アイビーS(マスカレードボール)
勝ち時計1:45.8は東京芝1800mの2歳戦ではコントレイルの東スポ杯に次ぐ史上2位タイのタイム。後半1000m58.1秒も上々で、ラスト11.3-11.2の加速ラップ。3着以下が意外にその後1勝クラスで振るっていないが、数字的にはもっと走ってよさそう。
◆未勝利(リトルジャイアンツ)
2歳レコードに0.2秒差と迫る好タイムでの決着。勝ち馬は葉牡丹賞に出走するもロスの多い競馬で3着。近いうちに1勝クラスはクリアするだろう。2着馬も次走勝ち上がり。
◆未勝利(アメリカンビーチ)
このレースに出走していた馬のうち、既に次走を使った2-7着馬、10-11着馬はいずれもそこで馬券に絡んだ。数字がすこぶるいいわけではないが、層が厚かった一戦。
◆新馬(ヤマニンブークリエ)
エピファネイアやシャフリヤールを出した菊花賞同日の芝1800m新馬。ラスト11.6-11.2の加速ラップがマークされた。勝ち馬は黄菊賞でミュージアムマイルに阻まれたが、2着パーティハーンは次走で5馬身差の圧勝を収めた。
◆新馬(スナッピードレッサ)
入れるか迷った一戦。勝ったスナッピードレッサの1:24.7、ラスト11.7-11.7は極めて優秀だが、大差がついた2着以下は微妙。レースとして「ハイレベル戦」かと言われると怪しい。
◆未勝利(タガノマカシヤ)
これも1個上と同じような評価。勝ったタガノマカシヤの1:53.0、ラスト12.0-12.3は優秀な記録で、JBC2歳優駿も先行不利の展開を前受けして奮戦した3着。勝ち馬は力がある。しかし3.3秒離された2着以下は低調と言わざるを得ない。
◆萩S(テリオスララ)
1000m通過62.4秒のスローペースで行った行った。ただしラスト11.4-11.1-11.2はそれなりに速く、勝ち馬は阪神JF3着、2着馬はベゴニア賞を勝った。
◆新馬(ヴィリアリート)
外から早めスパートを開始したヴィリアリートが、ラスト12.3-12.2の加速ラップで3馬身半突き抜けた。2着ポッドドンナーが次走V、3,6,7,8着馬が次走馬券絡み、8着ヤマニンチェルキが次走4馬身差勝ちののち1勝クラスでも連対した
◆未勝利(アイサンサン)
勝ち馬はアカイイトの全妹。全体時計1:34.3、ラスト11.6-11.5どちらも上々だった。その後レースに出走したのは2着モンテシート、6着シュバルツマサムネの2頭だが、両馬とも次のレースで勝ちあがり。
◆アルテミスS(ブラウンラチェット)
全体時計1:33.8、レース上がり11.5-11.1-11.0は前年のチェルヴィニアに半歩見劣るくらいの内容。スローペースで前残りの瞬発力勝負だった。1-3着馬が阪神JFで全滅の憂き目にあったが、京都開催で全く質の違うハイペース消耗戦になってしまったし、ブラウンラチェットは状態面の怪しさ、ショウナンザナドゥは展開の不利があった。ここのレースレベルを否定する結果ではない。7着マピュースは次走で赤松賞V。
◆未勝利(ダノンミッション)
スローの天皇賞(秋)で1:57.3が出た当日のマイル戦。馬場が速かったのはあるが、勝ち時計1:33.1、後半1000m57.9秒は立派。
11月のハイレベル戦:18レース
◆もちの木賞(クァンタムウェーブ)
新馬、未勝利戦で0.4秒以上の着差を付けてきた馬が6頭集結した一戦。外からロングスパートをかけたクァンタムウェーブが4角先頭に立ち、ラストも鈍るどころか12.9-12.4と脚を伸ばして勝った。重馬場とはいえ勝ち時計1:51.6も素晴らしい。
◆新馬(ナルカミ)
そのハイレベル・もちの木賞の翌週に行われ、良馬場で0.4秒上回る1:51.2という異次元の時計が出た。これは古馬を含む今年の京都ダ1800m良馬場で4位タイのタイム(1-3位はいずれもOP)。それが2歳新馬で出た恐ろしさに震えている。2秒ぶっちぎられた2着プリンセッサも次走は8馬身差勝ち。3着馬も次走V。来年の東京ダービー最有力……と言いたいが、ゴドルフィン所有ならUAEダービーか。名前を覚えておくべき1頭。
◆オキザリス賞(プロミストジーン)
勝ち時計1:25.1は良馬場のオキザリス賞としては標準的だが、それを前後半36.2-36.2、ラスト12.1-11.7のスローペースで叩き出した点は見過ごせない。これもナダル。ダート牝馬はここから番組が少ないので、母同様に浦和桜花賞を目指すのはどうだろうか。
◆黄菊賞(ミュージアムマイル)
勝ち時計2:00.0は京都芝2000mの2歳戦で歴代3位タイ。昨年屈指のハイレベル戦・京都2歳S(シンエンペラー)が59.1-60.7のハイペースで1:59.8。対するこちらは61.7-58.3のスローペースで2:00.0だから、内容的には極めて秀逸。まずは朝日杯FSが楽しみ。
◆新馬(エコロディノス)
その黄菊賞と同日の新馬戦。時計は0.9秒見劣る(=黄菊賞4着相当)が、ラスト1000m58.3秒は同タイム。こちらも十分に優秀といっていい。
◆未勝利(チムニートップス)
ナルカミがエグすぎて霞んでしまう、1:53.4なら2歳のダ1800m良馬場としてはそこそこいい時計。2着メイケイレインが次走V、そこから1.8秒離れた3着馬も次走で2着に入った。
◆東スポ杯2歳S(クロワデュノール)
新馬戦が強烈だったクロワデュノールの2戦目。休み明け+24キロの重め残りとスローペースもあって時計は初戦より0.1秒遅い1:46.8。翌日未勝利で1:45.9が出たことも加味すると、数字上は大きな強調点がない。毎年レベルの高い東スポ杯としては水準程度。スローで差し届かなかった馬、キレ負けした馬を中心に見直し。
◆1勝クラス(エンブロイダリー)
前後半36.6-33.4のスローペース、ラスト11.4-11.0-11.0の流れを勝ち馬が上がり33.1秒で差し切り。全体時計は遅いが終いはなかなか。
◆新馬(キングメーカー)
1000m通過63.3秒のスロー逃げを打ったキングメーカーがそのまま逃げ切り。ラスト11.9-11.7-11.2-11.0と最後まで加速して抜かせなかった。
◆赤松賞(マピュース)
勝ち時計1:33.9、後半1000m57.7秒どちらも好記録。全体時計はアルテミスSと0.1秒差だった。赤松賞を1分33秒台で勝ったのはナミュール、ステレンボッシュに次ぐ3頭目。GⅠ戦線でも楽しみ。
◆未勝利・牝(ロートホルン)
初戦振るわなかったロートホルンが逃げて一変。1000m通過59.3秒と速い流れで入り、ラストも11.3-11.6-11.6と減速せずに押し切って6馬身差勝ち。勝ち時計1:45.9はペース差があるとはいえ、前日の東スポ杯より0.9秒速かった。
◆京都2歳S(エリキング)
書くか迷った。スローペースの分とはいえ、勝ち時計2:00.9は同日の未勝利戦(2:00.8)より遅いもの。重賞にしてはハイレベルと言い難い。ただ、ラスト11.6-11.5-11.4の加速ラップだったので一応合格とした。
◆カトレアS(ナチュラルライズ)
前走で1秒以上の圧勝を演じた馬が4頭揃うメンバー構成。勝ち時計1:36.4はカトレアS(賞)で歴代2位タイの好タイム。馬場差はあれどレモンポップと並ぶ記録だった。出走馬の今後に注目。
◆新馬(ヘニーガイスト)
時計の出やすい馬場とはいえ新馬戦での1:23.8は速い。同日古馬3勝クラスと0.6秒差なら高評価に値する。ラストも11.3-11.7と速かった。
◆未勝利(ルクソールカフェ)
ルクソールカフェとアドマイヤデイトナが後続を2.5秒離してマッチレース。2歳レコードの1:35.8を記録し、同日カトレアSのナチュラルライズをも上回った。勝ち馬はカフェファラオの全弟。揉まれない外枠なら今後大きいところを狙える。もちろん2着馬も侮れない。
◆ベゴニア賞(ディアナザール)
1:33.4のタイムはそれなりに優秀。前後半35.1-35.4のミドルペースだったが、3番手ウィンターベルでも残り3F地点で先頭から0.9秒後ろにいて、隊列が縦長すぎた。後方から行って差し届かなかった組の反撃に要警戒。
◆新馬(マディソンガール)
勝ち馬はリバティアイランドの半妹。1000m通過63.8秒のスローから上がり3Fに全振りしたようなラップ構成ではあるが、それにしても11.1-11.1-10.9は驚異的。今後が楽しみ。
◆葉牡丹賞(ヴィンセンシオ)
2歳レコードの1:58.8、ラストは11.7-11.6の加速ラップ。良血の1-2着馬もいいが、3~4角大外進出から直線内にササりまくった3着リトルジャイアンツも走ってきそう。
12月のハイレベル戦:5レース(※8日終了時点)
◆こうやまき賞(カラマティアノス)
1勝クラスながらOP・重賞の3着馬が3頭出走していた。スローの実質2F勝負で時計は冴えないが、差し切った勝ち馬のキレはなかなか。
◆新馬(グランドプラージュ)
全体時計1:53.6は優秀で、ラスト12.4-12.1の加速ラップというおまけつき。大差がついた3着以下まで拾うかは微妙だが、2着ロッシニアーナまでは今後注目したい。
◆未勝利(カナルビーグル)
上記グランドプラージュと同日の未勝利戦。1000m通過64.2秒のゆったりした流れから、ラスト11.9-11.9で後続を8馬身置き去りにした。2歳ダ1800m良馬場でラスト2F11秒台が連発されたのはバーデンヴァイラー未勝利とこれだけ。
◆阪神JF(アルマヴェローチェ)
今年はリゲルSが1:32.9、阪神JFはハイペースで1:33.4。時計はさほど目立たないが、このあたりは当日雨が降った影響だろう。ラスト11.5-11.4の加速ラップで、勝ち馬の差し脚は際立つ。ただこの世代は桜花賞で舞台が阪神に替わる。こじれそうな予感はある。
◆1勝クラス(アメリカンステージ)
勝ち時計1:11.2は同日の古馬2勝クラスより1.0秒速く、京都ダ1200m良馬場の2歳戦史上最速のタイム。稍重~不良を含めてもこれより速かったのはアメリカンステージ自身の未勝利戦、ラブミーチャンの500万下、ロンドンタウンの未勝利戦しかない。かなり優秀。
おわりに
今年もタフな作業だった……。
この週にやるからには、なんとか全日本2歳優駿に間に合わせなければと思っていた。間に合ってよかった。上記の94レース(特に赤字の12レース)に出走していた馬は今後馬券的な意味でも、来年のクラシックを楽しむ上でも要注目だ。
まずは目先。全日本2歳優駿のナチュラルライズとミリアッドラヴ、そして朝日杯FSのミュージアムマイルからですね。