オークス2025 上位人気想定馬の評価
エンブロイダリー
能力評価:★★★★★
得意条件:高速馬場、マイル
苦手条件:2400mは?
《寸評》
3代母にビワハイジ、近親にブエナビスタやアドマイヤジャパンらがいる超良血馬。これまで6戦4勝。敗れた2回も新馬戦はドスローからラスト11.0-10.9で前を差し損ね、サフラン賞は出遅れて後方で包まれ、完全に仕掛け遅れの失敗騎乗だった。
何度も書いているがクイーンCの1:32.2というタイムが超優秀。3歳3月以前のマイルとしては史上最速記録だった。それも前半3F34.2秒のハイペースで他の先行勢が失速していくのを尻目に、2番手から脚色衰えず2馬身半差の完勝。内容も伴った。
桜花賞はやや出負け気味のスタートから中団内目を追走し、直線は外に切り替えてアルマヴェローチェとの追い比べをクビ差制した。ラスト11.4-11.4と失速もしておらず、3着以下に2馬身半差をつけた。アルマとは道中の位置もほぼ同じで、この2頭は(マイルにおいて)決定的な優劣はないが、それ以外に対しては完勝といっていい。
やはり問題は距離。通常オークスは「桜花賞上位馬がなんだかんだ距離もこなす」というレースなのだが、この馬の場合は父がアドマイヤマーズ。ダイワメジャー産駒でマイルGⅠを3勝した馬であり、延長にはやはり不安が残る。
血統だけでなく、クイーンCで前半3F34.2秒を2番手追走「できてしまった」スピードも、距離対応の枷になる。たとえば過去10年のオークスで「1600m以下で4角2番手以内の通過歴がある馬」の成績は【1-2-1-43】複勝率8.5%、単回収率9%、複回収率29%しかない。好走4例(ナミュール、スタニングローズ、ハーパー、チェルヴィニア)も2歳時に前半3F36秒~38秒のスローで先行しただけ。マイルのハイペースで前に行けた馬が2400mでも折り合いをつけるのは至難だ。せめてもの救いは桜花賞で前受けしなかったことか。今回は距離の課題を能力でカバーできるかどうかの一戦。前走に比べるとオッズ的魅力は急落する。
アルマヴェローチェ
能力評価:★★★★★
得意条件:道悪
苦手条件:2400mには不安あり
《寸評》
デビュー2戦目の札幌2歳Sでタイム差なし2着。外有利のトラックバイアスで最内枠からインを突き、のちのNHKマイルC2着馬マジックサンズと僅差、青葉賞2着馬ファイアンクランツには先着した。阪神JF(京都)は馬場と展開が向いたとはいえ、ラスト11.5-11.4の加速ラップを差し切り。どちらも強い内容だった。
前走は瞬発力が問われる阪神マイルに替わってどうかと思っていたが、結局雨が降ったのもあり、上がり最速で勝ち馬とクビ差の2着。ラスト11.4-11.4と失速のない追い比べで、後続に2馬身半の差をつけた。エンブロイダリーのくだりでも書いたが、上位2頭が双璧で3着以下とはやや力差がある競馬だった。
こちらも距離不安はある。2代母レイズアンドコールはサクラバクシンオー産駒で、現役時代千直を含む1400m以下で全5勝。母ラクアミも1600m以下で3勝、そのきょうだいにカリボール、モンドキャンノ。自身の半姉がカリーシ。コテコテの短距離ファミリーで理想はマイル以下、1800mで上限ギリギリ一杯という血統だ。2400mはベストと言い難い。
ただ、実馬だけで言うなら、2歳時に1800mの重賞を差して好走できているし、阪神JFも桜花賞も引っかかる面がなく、むしろ勝負所で少し手応えが渋いくらいだった。母系の先入観を抜きにすれば、距離延長に対応できる類の走りはしている。2400mならエンブロイダリーよりは上位に評価する予定。
リンクスティップ
能力評価:★★★★
得意条件:道悪、中距離
《寸評》
新馬戦は大出遅れをかましながら、のちの若駒S2着ミッキーゴールドとタイム差なしの接戦。2戦目は単なる未勝利ではなく前走2-3着馬が10頭も集合する好メンバー。4角先頭で上がり最速V、勝ち時計2:00.8は翌日の3勝クラス(ホウオウプロサンゲ)より速かった。
きさらぎ賞は稍重で1000m通過58.7秒のハイペースを果敢に先行。勝ち馬サトノシャイニング(→皐月賞5着)には3馬身離されてしまったが2着を確保した。3着馬ランスオブカオスがチャーチルダウンズC勝ち、4着ショウヘイが京都新聞杯勝ち、8着ミニトランザットもチャーチルダウンズC3着、10着ウォーターガーベラがチューリップ賞2着などメンバーレベルも高かった。
桜花賞は初のマイル戦で出負け、隣と接触して後方ポツンの作戦に。4角で大外を押し上げことへの批判も見かけたが、この日の馬場を考えれば見た目ほどロスは大きくなかったはず。最後は上位と0.4秒離されて3着止まりだった。ただ、後続にはしっかり差をつけた。
血統的にも戦績的にも、桜花賞組で2400mへの延長を最も歓迎するのはこの馬。エンブロイダリーとアルマヴェローチェがともに距離不安を抱える以上、逆転の可能性は大いにある。期待感を持って臨める。
カムニャック
能力評価:★★★★
得意条件:2000m以上、左回り
苦手条件:マイル、右回り△?
《寸評》
ブラックタイド×サクラバクシンオーのいわゆる「キタサンブラック配合」。中京芝2000mでのデビュー戦は超スローペースからのラスト10.9-10.9を差し切り勝ち。同日小倉記念で1:56.5が出た馬場での2:04.2なので時計は決してよくないが、終いに素質の片りんは感じた。
アルテミスS、エルフィンSは直線追ってから伸びを欠いた。ただ、どちらも川田騎手のコメントを見るに本調子でなかったようであまり気にしなくていい。得意の中距離に戻ったフローラSは序盤少しだけ行きたがったが我慢も利き、直線はやや左にモタれながらも差し切った。高速馬場とはいえ勝ち時計1:58.6はウインマリリンの記録を上回るレースレコードであった。
左右差を感じる走りで、ベスト条件は左回りの2000~2400m。GⅠを勝つにはここが最初にして最大のチャンスだろう。前提としてレースレベルは桜花賞>フローラSだが、エンブロイダリーやアルマヴェローチェが距離に苦しむようなら一発あっていい。
エリカエクスプレス
能力評価:★★★★
得意条件:持続力勝負、マイルのハイペース
苦手条件:折り合い課題で2400mは?
《寸評》
新馬戦は逃げて12.7-11.0-11.4-11.7-11.9-11.8-12.1-12.1というラップ構成。序盤突っ込んで後半徐々に減速しながら押し切った。全体時計は1:34.7はまずまず優秀ながら、折り合いに課題を残す走りだった。続くフェアリーSは他馬がテン3F34.1秒と飛ばしてくれたのも功を奏し、好位でなんとか我慢が利いた。勝ち時計1:32.8はレースレコードを大幅更新。パフォーマンスとしては文句なしに強かったが、結局「スローで折り合えるか」という課題は先送りのまま桜花賞へ向かうことになった。
その桜花賞は内枠から絶好のスタートを切り、鞍上が抑えながら前半3F34.5秒のペースで逃げた。トラックバイアスもあって1.1秒差5着という結果自体はさほど悲観しないが、促さなくてもやっぱりこのくらいのペースになってしまうことが判明した。本質的にはハイペースをガンガン先行して持続力勝負に持ち込むマイラーだろう。
前回で逃げを経験させたことにより、折り合い面への悪影響も懸念される。この気性、この臨戦過程で800mの延長はさすがに対応が難しい。見送る。
パラディレーヌ
能力評価:★★★
苦手条件:右回り△
《寸評》
新馬戦こそスローペースからラスト11.2-11.0に差し届かず3着に終わったが、その後着差を付けて未勝利&1勝クラスを連勝。つばき賞の勝ち時計1:46.8は冬の京都開催としては優秀な部類で、3歳戦に限ると昨年のきさらぎ賞(ビザンチンドリーム)と並んで最速タイだった。
フラワーCはゲート内の駐立が安定せず痛恨の出遅れ。コーナーで動かしていき、4角出口でゴーソーファーを押し出すように進路を確保。既に前は遠かったが、ラストは勢いよく追い込んできた。決してうまく立ち回れたレースではなかったが、そのなかで力は示した。右回りだとコーナーで外に張る面があるので、中山1周競馬は条件として合っていなかった感。東京替わりはプラスだろう。
あとはそもそも能力が足りるかどうか。フラワーC組は3着ゴーソーファーがフローラS16着、6着ハギノピアチェーレも同10着。5着馬ミッキーマドンナが自己条件2着に入ったくらいで、レースレベルが高くはない。GⅠに混ざってどこまで。