競馬の必勝法? マーチンゲール、ココモ法とオススメの賭け方「4分類法」

はじめに

「競馬に必勝法はあるか?」

そんなものはない! ……と言いたいところだが、強いて言えば「理論上は必勝法と言えるもの」がある。

それが題に挙げた「マーチンゲール法」あるいは「ココモ法」と呼ばれる投資手法である。元々はカジノで用いられる用語らしいが、ギャンブル全般にも拡大適用される。予想の精度ではなく、賭け方でプラス収支を出すという発想だ。

かいつまんで説明すると「当たったらプラス収支になる金額を賭け続ければ、いつか当たってプラスになる」という考え方だ。勝つまでやれば負けない。根性論のようだが事実でもある。それぞれの手法の概要をメリット・デメリットと合わせて紹介していこう。

マーチンゲール法の概要とメリット・デメリット

「マーチンゲール法」とは予想が外れた場合、次のレースには購入額を2倍にするベット手法。“的中したら2倍になるギャンブル”を念頭に置いた考え方で、一度でも当たればプラス収支になる。

1回目で100円を賭けて当たれば200円払戻。つまり100円の勝ちになる。外れたら2回目は200円を賭ける。当たれば400円払戻。2回合計300円賭けて400円ゲットなので、やはり100円の勝ちになる、という寸法だ。

さて競馬に適用しよう。中央競馬の場合、払戻率は(券種にもよるが)だいたい75.0%に設定されている。よって「平均的な予想の実力を持つ人」が合成オッズ2倍の買い目を組んだ場合、的中率は37.5%になると推測される。この前提に立ってシミュレーションを表にした。

メリットは「プラス収支になる確率の高さ」だ。上記の表に示した通り、327万6700円を用意できれば、15連敗しない限り100円の黒字を勝ち取れる。そして15連敗する確率はわずか0.09%ほぼ必ず100円勝てる手法といえる。まあそれは無理でも、10万円ちょっとの資金があれば99%の確率で100円はゲットできる

デメリットは「必要資金の大きさ」「万が一連敗が続いた場合のリスク」である。運悪く10連敗で10万2300円負けになった場合、次は歯を食いしばって10万2400円賭けなければならない。これが「理論上は必勝法」と書いた理由である。メンタルが持たなくなるか、破産するリスクを孕んでいる。そんなクソデカリスクを背負った上で、成功時に得られる報酬はたったの100円。正直言って割に合わない。

別の手法も見てみよう。

ココモ法の概要とメリット・デメリット

「ココモ法」とは予想が外れた場合、購入額を「前々回と前回の合計」にするベット手法。高校数学で習ったフィボナッチ数列というやつだ。これは“的中すれば3倍になるギャンブル”を念頭に置いた考え方で、やはり一度でも当たればプラス収支になる。

1回目と2回目は100円を賭ける。3回目は100+100=200円を賭ける。当たれば600円払戻で、累計400円投資だから200円勝ちになる。もしダメなら4回目は100+200=300円を賭ける。当たれば900円払戻で200円勝ちとなる。

競馬の場合、先ほどと同様に払戻率75.0%から起算して、合成オッズ3倍の買い目は的中率25.0%と推測される。これに基づいたシミュレーションを表にした。

メリットは「(マーチンゲールに比べて)投資額の上昇が緩やかであること」「当たるタイミングによっては大きなプラスもありえること」である。10万円用意しておけば14連敗しない限りプラス収支になる。そして14回目で的中すれば1万4500円の黒字。当たるタイミング次第でまとまった勝ち額にもなりえる。

デメリットは「(マーチンゲールに比べて)連敗確率が有意に高いこと」。上記のシミュレーションだと1.78%の確率で10万負ける。1.78%の事象はそう頻繁に起きるわけではないが、しかし全く起きないわけでもない。「日本人から無作為に1人選んだら新潟県民でした」くらいの確率だ。リスクはそれなりにある。

「追い下げ」の概要とメリット・デメリット

負ければ負けるほど賭け額を大きくするマーチンゲール&ココモ法とは正反対の発想が「追い下げ」だ。これは『馬券裁判男』こと卍氏の提唱する買い方で、残高に定数とオッズを掛けて購入額を算出する方法である。残高が多いほど大きく賭けて、残高が少ない時は賭ける金額を小さくする。

メリットは何といっても「破産しにくいこと」である。残高がゼロに近づくほど購入額が下がるので、よほど負け続けない限り弾切れになることがない。これもシミュレーションしてみよう。

簡略化して「常に残高の1%を賭ける」と仮定した場合が上記の表だ。10万円でスタートした場合、381連敗しなければ破産しない

デメリットは「勝つ確率が低くなること」である。要するにこれは「期待値1超の馬券を安定して買える人」のための手法である。「長期的に買い続ければプラスになる人」が「長期的に買い続けるため」の資金管理法だ。確固たる予想の実力を持たない人がマネをすると、負ける→賭け額を下げて当たる→しかし負けが取り戻らない→以下繰り返し……と言う具合で、ただただジリ貧になる可能性が高い。

期待値の高い馬券を選び続けられる猛者、あるいは「破産さえしなければいずれ勝ち組になってやる」という予想修行中の人、あとは「勝たなくていいから末永く競馬を賭け続けたい」という人にも向いているかもしれない。いやしかし、馬券を楽しみたいだけならずっと100円ずつ買えばいいじゃん、という話なのだ。

オススメの賭け方「4分類法」とは?

ここまで「資金が無尽蔵にあれば理論上は必勝法」であるマーチンゲール法ココモ法、それとは対極にある守備重視の資金管理法追い下げ」を紹介した。

正直言って「追い下げ」で勝てる実力があるなら、おそらく均等買い(1レース◯◯円ずつ)でもたいてい勝つと思う。マーチンゲールは「押せば100円貰えるけど、0.09%の確率で300万負けるボタン押したい?」という話で、個人的にはまるで魅力を感じない。試すとしたらココモ法はアリかもしれない。

そもそも「競馬とどう付き合うか」のスタンスによって、ベストの買い方も変わる。もしあなたが「1年に1回だけ誰かの付き合いで競馬場に行ってその日だけ馬券を買う」「その日は100円でもいいから絶対プラスで終わりたい」という付き合い方なら、マーチンゲールやココモ法で勝ち逃げするのが得策だろう。

ただ、わたしの場合は寿命を迎えるまで数十年スパンで馬券を買い続けることが濃厚なので、そういう小手先の技で勝てるとは思わない。今すぐ300万円用意してマーチンゲールを始めたとして、きっとそのうち15連敗する日が来る。

ではどうするか。最後に自論を述べよう。オススメの買い方を仮に「4分類法」と名付けた。レースを自信度とオッズの高低で4種類に分け、購入金額を決めるという発想である。

「購入額を自由に決められる」という馬券特有の戦略性は、期待値を高めるために使うべきだ。つまり「期待値が高いと思った馬券はたくさん買って、そうでもない馬券は少額にすべし」。当たり前だが、これが大原則である。

資金配分をツールのひとつとして戦略的に馬券を買うためには、事前予想をすること、自分の予想を俯瞰的に見ることが不可欠である。例となるルーティーンを下の画像に示した。

まずは参加レースを決めてしっかり予想をする。誠心誠意予想をした結果、会心の結論が出るレースもあれば、そうでないレースも当然ある。であれば自信の有無で強弱は付けよう。均等に1000円ずつ買って、自信ありレースは当たったのに、自信なしレースがことごとく外れたせいで負け……という結果はあまりに不毛だ。

予想が完了したら予算を決める。たとえば「明日は8レース参加で合計2万円買う」とか。そして自分の予想を仕分けていく。魅力度(自信度)とオッズの高低で、以下の4つに分類する。一応補足しておくが、ここで言う「自信」とは的中する自信ではなく、期待値1を超える“妙味のある予想”ができた自信のことである。

①魅力度が高くてオッズが低いレース
→高確率での的中が予感でき、十分な期待値も感じる勝負レース

魅力度が高くてオッズが高いレース
→確実性は低いが期待値はあるので、長期的視点で額を張っておきたい長打狙いレース

魅力度イマイチでオッズが低いレース
→期待値平凡で当たっても利益が少ない。少額または見送りが賢明のお遊びレース

④魅力度イマイチでオッズが高いレース
→確実性は低いが当たればその日の戦局を大きく変える。少額握って当たればラッキーレース

たとえば、まず①勝負レースが当たれば払戻が1日の予算を超える(=勝ちが確定する)ように配分する。続いて②長打狙いレースをある程度しっかりした額で買う。次いで④当たればラッキーレースを、当たればその日トントン~やや負けくらいで終われるように買う。なお予算が余っていれば③を軽く買って遊ぶ。購入金額は①>②>④>>③だ。

こうすると①が的中すればその日は勝ち、②が的中すれば圧勝、せめて④が的中すれば大敗はない、という状況を作れる。複数的中が出れば大きく勝てる。①②④が全ハズレしない限り、日次収支が大炎上することはない。この点でマーチンゲール法やココモ法に通じるものがある。もちろん上記は一例で、自分の予想した馬券のオッズが総じて低すぎるとこのような配分はできないが。

この買い方が24年7月現在のわたしのオススメ「4分類法」である。マーチンゲール法やココモ法といったギャンブル一般のベットマネジメントとは一線を画した、競馬ならではの資金分配の考え方だ。

まとめ

今回は競馬の賭け方というテーマで「理論上の必勝法」であるマーチンゲール法、ココモ法の概要とメリット・デメリットを紹介した。加えて“守備重視”の追い下げ」、そして自論の4分類法についても解説した。

たびたび書いているが、馬券というゲームで長期的にプラス収支を計上するのは極めて難しく、勝ち組は参加者全体の3~5%と言われている。確かにマーチンゲール法やココモ法を利用すれば高確率で少額のプラスを得ることは可能だが、それ相応のリスクとトレードオフになる。

結局のところ、予想そのもののクオリティを上げることが馬券で勝つための最善ルートに他ならない。その上で「オイシイ馬券はたくさん買って、そうでない馬券は手控える」という大原則を見失わずに購入金額をハンドリングする。これが重要だ。その一例が「4分類法」である。

ノーリスクでお金が増える打ち出の小槌のような手法を期待していた方にはいささか残念な結論となっただろうが、このあたりで本稿を締めくくる。

馬券というゲームに「簡単に勝つ方法」はないが、しかし「勝つ方法が全く存在しない」わけでもない。賭け方の工夫も、収支を改善するためにできることの一つだ。ご自身の手法を確立し、磨き上げる上で当記事が何らかの参考になれば幸いである。

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鈴木ユウヤ

東大卒競馬ライター。中央競馬、南関東競馬を中心に情報発信している。単勝&ワイド。攻めて勝つ。