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競馬はなぜ難しいのか、我々にできることは何か、改めて整理しよう

競馬はなぜ難しいのか

競馬は難しい。

これまでの人生で何度そう呟いたか分からないが、とにかく難しい。難しいからこそやりがいがあって面白いのだが、それはそれだ。

では、なぜ競馬は難しいのかを整理してみよう。

まず第一に挙げられるのは控除率の存在だろう。ざっくり言えば25%が胴元に引かれるわけで、この前提条件で回収率100%を超えようとするのは難しくて当然ともいえる。

別に何の自慢にもならないが、わたしも馬券を買える年になってからというもの、年間回収率が75%を切ったことは中央地方合わせて一度もない。もし、この忌々しい25%がなければ毎年“勝ち組”には在籍していることになるのだが、こればかりは仕方ない。

それとは別に、もう一つの理由もあると思う。

それは「変数の多さ」である。競馬場、距離、芝とダート、天候、馬場状態、血統、騎手、調教、適性……最大18頭に対してあらゆる変数を総合的に考慮することが求められるうえに、競うのは「的中率」ではなくオッズという別概念を介在させて算出される「回収率」なのだから、もうやってられない。

仮に、たとえば相撲の勝敗を予想するゲームがあったらどうだろうか。考えるのはせいぜい両者の実力(≒番付)に相性、その場所の調子を加味するぐらいか。もちろん博打の対象にはなりっこないが、当てるだけでよければ7~8割程度は正答すると思う。

話を戻そう。では、この果てしなく難しいゲームに対して我々ができることは何だろう。ここまでの仮説を基に考えるなら、それは変数の取捨選択、特に「捨」をしっかりと行って、まず変数を減らしていくことになる。

我々にできること

馬券という競技において、我々が取捨選択、つまり意思決定できることは大きく分けて下記の4つになる。

1.レース選び
2.馬選び(いわゆる予想)
3.買い目選び
4.購入金額の押し引き

この4要素をどうトータルコーディネートしていくか、が馬券の本質ではないか。世間ではGⅠや重賞を対象に、印を打って見解を述べるだけの予想が流布しているが、あれは「競馬予想」であって「馬券」ではない。馬券でどう戦うか、に占める要素としては、印の順番など2~3割程度ではないか。

それぞれ、考えていこう。

・レース選び

最初にしてこれが最大の焦点。

まず現実問題として生身の人間が中央競馬だけで週48~72レース、地方も合わせれば無数に行われる競走の全てを片っ端から予想して、高いクオリティを保てるわけがない。いや、そういう超人も世の中にはいるのかもしれないが、わたしのような凡人には無理だ。AIや指数を用いた機械的な手法ならまだしも。

ちょっと話は逸れるが、だからわたしは全レース(に近い数)の予想をnoteなりウマい馬券なりで売っている人間をそもそも信用していない。数打ちゃ当たる、当たればそれを宣伝すればいい、適当でも予想を出せば多少は売れて実入りになる。これは残念ながら現実なのだが、競馬に関してはわたしも夢見がちで頑固な人間でありたい。

ということで、まずは自分のキャパシティに収まる参加数に絞る必要があるだろう。

では、どういう基準で絞るのか。これが個性であり、腕の見せ所だ。別に、ひとつの正解はない。人気馬が飛びそうなレース、狙っていた馬が出るレース、トラックバイアスが読めている競馬場、あるいはそもそも重賞やメインレースだけやる、など考え方はいくらでもある。

個人的な最近の参加基準で言うと、1.メインレース、2.温めていた馬が出るレース、3.イン前決着になりそうなレース を複合させて1日10個程度に留めている。

ちなみに、なぜ「3.イン前決着になりそうなレース」を狙うかと言えば、統計的に競馬は前有利であり、そういうレースの方が計算が立ちやすいから。

イメージとして、こんな思考実験を。特に前提条件がなければ競馬は「イン前決着の確率70%、外差し決着の確率30%」だとする。その中で、あなたが特に「このレースは(普通のレースより20%ぐらい)前残りになりそうだ」と思ったとき、実際の確率は「イン前決着90%、外差し決着10%」。ところが、逆に「このレースは差しが届きそうだ」と感じた場合、実際は「イン前決着50%、外差し決着50%」ぐらいだと考えられる。となれば、後者は捨ててしまった方がシンプルではないか? 差し想定の馬券はその展開予想が外れた時点で劣勢になるので、極力買いたくないのが本音だ。

・馬選び、予想

さて、続いてが本丸に近い部分。どういう馬を買うべきか、要するに予想の話だ。

どういう馬を買うべきか、というざっくりな問いに対して、あなたならどう答えるだろうか。

わたしは雑に言うなら「強くてオッズもオイシイ馬」が理想だと考える。もう少しだけ丁寧に書けば、「理詰めで買える、好走確率が高いにもかかわらず過小評価されている馬」となる。

この「理詰めで買える」というのは地味に大事で、突発的な激走や紛れをいちいち気にして拾おうとしていくとキリがない。理詰めでとれないものは仕方がない、という自戒の意味も込めてこう書きたい。

これを実務的なレベルに落とし込もう。やるべきことは以下のような馬を探すこと。

1.展開やトラックバイアスの恩恵が受けられる
2.そもそも好走に足る能力がある
3.過小評価をもたらす何らかのカムフラージュがある

ここまで集約される。馬券は3着以内に入らなければ1銭にもならない。18番人気4着に価値はない。だからまず来る馬を選ばなければいけない。それでいて、馬券購入者の評価と実際の好走可能性が完全に合致していれば期待値は0.75前後になってしまうから、ただ強いだけの馬でも意味がない。

好走可能性と過小評価、この両方が重なるところを狙い打たなければならない。「予想」とは、この精度を高めるための営みに他ならない、とわたしは思う。

ちなみに、実際にオッズが何倍つくか、はあまり大事ではないとも思っている。たとえば「この馬は10%ぐらいの確率で勝ちそうだから、単勝11倍ついたらオイシイ」みたいな論法をとっている予想家の方もいるが、残念ながらわたしにはそもそもそのパーセンテージを正確に割り出す術がない。結局そこで「経験則」のような曖昧なものに頼るのであれば、近走の敗因であったりを細かく地道に分析して、独自の見解(≒ちゃんと観察した人にしか知り得ない買い、消し要素)を持っておくことの方が重要ではないかと思う。

きっと、ほとんどの人はそんな面倒で地味な作業をやっていないはずだ。当たり前のことを当たり前にやる。それだけで差をつけることができる。特に平場や地方なら。(GⅠは正直キツい。ここ1年ぐらいはオッズのつき方がおかしい。いわゆる“プロ”の見解が頒布されすぎている。)

・買い目選び

買い目については、まだわたしの中でも確たる正解が分かっていない。ただ、点数を広げれば広げるほど、 1.期待値0.75に近づく 2.検討対象が増え、1頭あたりにかけられる労力が下がる というデメリットがあるため、極力絞った方がいいのではないかと思っている。

ちなみに、学生時代に南関東競馬でそれなりのプラスを叩いたときは、ワイド1点買いを基軸にしつつ、オッズが付かない時だけ別券種を検討、という手法をとっていた。ここは将来的に加筆したい。

・購入金額の押し引き

最後に購入金額の押し引きについて。これはもちろん購入0円=ケン、というのも含意している。

わたしはこの頃前日予想を徹底していて、前日に予想したレース全体を俯瞰し、特に当たりそう、またはオッズがオイシイと思えるところは大きく、そうでないレースは小さく資金配分している。

目の前のレースを予想して順に参加していると、ついドツボにハマってしまう。たとえば東京最終に一番オイシイレースがあるのに、それまでダラダラと買い続けてきたせいで当たってもトントンまでしか戻せないとか、あるいは7レースに最も自信があったはずなのに、大して分かりもしないメイン、最終に額を張ったせいで負ける、とか。

麻雀と同じで、配牌や局面がよければ強気に勝負すべきだし、そうでなければオリを選択するのが賢明なのだ。当たり前だが、こと競馬になるとそれがなかなかできない。

個人的には当日にトラックバイアスを吟味して予想を変更できるメリットよりも、全体を俯瞰して戦略を組むメリットの方が大きいとみて、やはり前日のうちに予想も購入額も全て固めるのが正解だと思っている。中央の場合ね。地方はオッズが分からないのでどうしようもない。

ラストにちょっと自慢話を。今年のダービー、わたしは◎スキルヴィングだったので、当然外れた。外れたが、1日の収支としてはそこそこのプラスで終えることができた。

これはその日に2つ、具体的にはむらさき賞のローシャムパーク単勝4倍(予想時点)と、白百合Sバルサムノート単勝3.8倍(予想時点)という自信度Sの案件があったから。スキルヴィングとソールオリエンスのあまり確信の持てない馬連4倍に突っ込むぐらいなら、その2頭の単勝を大きく張った方がいい、という冷静な判断ができた。これも全体を俯瞰して金額を決める作戦の成功例だろう。

終わりに

以上、馬券という競技において我々がやるべきこと、もとい、やれることを整理してきた。

競馬には変数が多い。多いからこそデータも見解も他人のものを気にし始めたらキリがないほど出てくるし、何が正解か迷ってしまう。

ただ、本当は迷っている時間などないのだと思う。やるべきことを整理、自分の中で決めたら、あとはとにかく手と目を動かす。これしかない。

当たらない、収支のよくない時期が続くと、わたしもついつい予想の組み立てや考え方を変えたくなってしまう。そうではなくて、そこの幹となる部分はブレずに、やるべき作業をひたすらやらなくては勝てないのだ。

馬券で「勝てるサイクル」を見つけた人は、なかなかマイナス域に戻ってこない。ずっと勝ち続ける傾向がある。それは、幹となる部分を変える必要性を感じなくなることで、ブレずに適切な作業を進められるようになるからではないか、と想像している。

プラス収支の実現に向け、今日も「やれること」をやっていこう。

鈴木ユウヤ

東大卒競馬ライター。中央競馬、南関東競馬を中心に情報発信している。単勝&ワイド。攻めて勝つ。