ミックファイアについて語ろう

回顧・次走注目馬

はじめに

ミックファイアは弱くねえぞ!!!!

これが書きたかっただけです。お疲れ様でした。







……ではさすがに締まらないので。

今週日曜はフェブラリーS。地方からは3頭、JBCスプリントの勝ち馬イグナイター、重賞8勝の女王スピーディキック、そしてミックファイアが参戦を予定している。

なんと言ってもミックファイアは我らが南関東の無敗三冠馬だ。それがたった一度の敗戦で侮られすぎではないか? 曲がりなりにもここ8年ほど南関に齧り付いてきた人間として、いても立ってもいられずキーボードを叩くことになった次第だ。

最初にことわっておくが、今回のフェブラリーSで来る来ないの議論をする気は毛頭ない。そもそもこのレースは「ダートGⅠ」と言いながら芝発走であり、直線が500m超で坂アリという特殊オブ特殊なコース。地方馬にとって完全なるアウェーだ。中央でダートが軽視されていた時代ならいざ知らず、今はもう常識的に考えて厳しい。

実際、11年のフリオーソ2着を最後に掲示板すらない。ミューチャリー、モジアナフレイバーなどJpnⅠなら馬券に絡めるクラスの馬でもダメだった。そのフリオーソだって3歳時からJRAで芝を経験していた。ミックはこれが正真正銘、レースで芝(の部分)を走る初めての機会。苦戦が予想されるのは事実だ。

しかしそれはそれとして言いたい。ミックファイアをナメるな、と。そう思うに至った根拠に、ひと握りのひいき目をブレンドして、以下乱文御免で書いていく。

ミックファイアと、南関現4歳の世代レベル

南関クラシック、ないし東京ダービーのレベルは年によってまちまちだ。中央のダービーでも年によるバラつきはあるわけだから、当然と言えば当然なのだが。

ここ数年でいえばヒカリオーソ、ミューチャリー、ウィンターフェル、カジノフォンテンの19年世代が超ハイレベル。アランバローズとランリョウオーの21年世代が次点だろう。もっとも、ランリョウオーは故障で東京ダービーにはいなかったが。

では昨年はどうだったか。この世代は番付でたとえると構図が分かりやすい。

まず、強い関脇が2頭いる。ハイセイコー記念でスローの後方からマクり自力解決したマンダリンヒーロー。アメリカ遠征を敢行し、サンタアニタダービーで僅差2着に入った。もう1頭が京浜盃勝ち馬サベージ。どちらも、年によってはダービーを勝っていて不思議ない能力の持ち主だ。

この2頭の挑戦を跳ね返し続けているのが大関・ヒーローコール。決してマイラーではないのに全日本2歳優駿で4着に入り、伏竜Sでは雨の中山を大外マクりの粗い競馬で3着に入った実力馬。これだけ走れれば本来はSⅠ当確レベルであり、羽田盃の単勝1.4倍は普段から南関をやる勢の肌感覚をよく示すものといえる。

そして。そのヒーローコール確勝ムードの羽田盃に5か月休の急仕上げで登場し、6馬身ぶっちぎったのが横綱・ミックファイアなのだ。勝ち時計1:50.9はレースレコード。それどころか、交流重賞や古馬戦を含めても(おそらく)歴代2位の時計である。たしかにこの時期の大井は馬場も速かったが、スマートファルコンが2:00.4で走っていた頃とはさすがにワケが違う。馬場の力だけで出る時計ではない。

東京ダービーでは再度ヒーローコールを6馬身差で完封。この時は1000m通過63.7秒のスローを2番手追走で楽な展開だったとはいえ、後半1000m61.1秒でまとめた。同月の帝王賞が後半1000m61.5秒。もちろんペースが全く違うのだが、能力を示す傍証にはなる。

タイム指数の類を扱う人間ではないので主観に過ぎないが、ここまでの内容を踏まえると「10年に1頭の逸材と謳われたミューチャリーに肩を並べるクラス」といっていいのではないか。つまり、古馬相手のJpnⅠで好勝負できる地力の持ち主だと評価している。

JDDの評価と秋の不振

さて、2場所連続優勝で名実ともに南関の横綱となり、誇りを胸に挑んだ三冠目・ジャパンダートダービー。ここでも兵庫CS6馬身差勝ちのミトノオーらを相手に回し、好位追走から上がり最速、2馬身半差の快勝を収めた。晴れてトーシンブリザード以来、22年ぶりに三冠馬の称号を手にしたのだった。

この時の2着馬キリンジは先日の佐賀記念で2着に好走。3着ミトノオーは浦和記念で古馬相手の2着。「JDDのメンバーレベルが低かった」という議論は疑わしい。変な書き方になるが、“だいたいこんなもん”というレベル感だ。極めてハイレベルだったとは言わないが、もっと低調な年も珍しくない。名前を挙げるとカドが立つから書かないけど。

ところが、である。

ひと夏越して10月に再始動、盛岡ダービーグランプリの走りが振るわなかった。先ほどの書き方を踏襲すると「関脇」のマンダリンヒーロー相手に0.2秒差の辛勝。春に1.2秒離したヒーローコールが三度封じてきた相手に、思わぬ苦戦を強いられた。このときは「長距離輸送でカイ食いが落ちた」という趣旨のコメントも出ていた。それが直接の原因かは分からないが、これはミック本来の走りからほど遠い。

それは東京大賞典に関しても同じこと。タフ馬場の適性うんぬんもなくはないだろうが、そもそも春に自分が見せたパフォーマンスを全くできていない。結局、復調に至らないままレースを迎えてしまったのだろう。あれで「力負け」などと言われたら困る。

今後ミックファイアがまた大舞台で活躍できるかは、能力の問題ではなく、ひとえに「復調できるかどうか」。この1点にのみ懸かっている。

蘇れ、ミックファイア。お前ミックやぞ。

南関東三冠馬の走りをまた見せてくれ。

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