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【天皇賞(春)】長距離界に帝王君臨? 有力馬の調査レポート

天皇賞(春)

ドゥレッツァ

能力評価:★★★★★

苦手条件:折り合い的には中距離の方がベター?

臨戦過程:休み明けの金鯱賞を叩いて計画的な2戦目。中6週

《寸評》
「3歳夏の間に芝中距離の古馬3勝クラスを勝つ」というのがなかなかの快挙で、同様の例は2000年以降だとアヴェンチュラ、ショウナンマイティ、アズマシャトル、リアファル、グローリーヴェイズ、アナザーリリック。いずれも後の重賞馬、うちドゥレッツァ含め3頭がGⅠ馬になった(筆者註:ショウナンマイティとリアファルもGⅠ勝てる器だったよなあ)。この点があるので、個人的には「現4歳牡馬の世代レベル論」から、この馬だけは独立した位置にいると考えている。

菊花賞は序盤行きたがるのを逆手にとる逃げで外枠の不利を消し、その上で折り合いをつけたルメールの神業があっての勝利。とはいえ2着と0.6秒差なら、好騎乗の分を差し引いてもタスティエーラとの勝負付けは済んだと見ていいだろう。金鯱賞は59キロを背負っていたし、イン有利の馬場とハイペースが全てプログノーシスに味方した分の着差。これも悲観することはない。そもそもプログノーシスという馬は強い。

懸念を挙げるならやはり折り合い面。中距離の方が乗りやすいのは事実だろう。ただまあ、山吹賞で1000m通過64.4秒を我慢できたレースもあったし、序盤からソロっと行けば対応できないことはない。菊花賞の再現ではなく、戸崎騎手は戸崎騎手なりのアプローチで競馬を作れる。

テーオーロイヤル

能力評価:★★★★★

得意条件:3000m以上では【3-1-1-0】。生粋のステイヤー

臨戦過程:骨折による1年の休養から、コンスタントに長距離を4連戦。お釣りは微妙

《寸評》
一昨年にこのレース3着。その後は番組の都合上2200~2500mを使うも結果が出ず、ジャパンC後に放牧先で骨折して1年休養。昨年11月に復帰した。

ステイヤーズSは前2頭以外みんなドスローという競馬で上がり33秒台を出すも差し届かず。ダイヤモンドSはトップハンデを背負いながら、スローの上がり3F勝負で前を行くサリエラを差し切り。阪神大賞典もスローペースだが、今度は先行策。インの3番手から抜け出して後続を5馬身千切ってみせた。騎乗がよかった面もあるがスローでこの着差は伊達ではない。この3戦はいずれも強い。

ローテがタフなこと以外は特段不安らしい不安もなく、素直に信用していいのでは。ちなみに過去10年の春天で阪神大賞典の勝ち馬は【3-2-2-2】複勝率77.8%、単回165%、複回136%ときっちり走ってくる。

タスティエーラ

能力評価:★★★★

得意条件:持続力勝負、消耗戦

臨戦過程:有馬記念から直行で臨んだ大阪杯が不可解な大敗。中3週でどこまで上がるか

《寸評》
例年なら皐月賞馬っぽいダービー馬。日本ダービーは2番手以下実質ドスローの特殊な流れを前受けしてカラくもしのいだもので、多分に展開利があった。競馬の内容としてはハイペースを先行して粘った皐月賞の方が強く、内回り系の持続力勝負が合う。父サトノクラウンとイメージが重なる。

菊花賞はドゥレッツァに完敗した2着。これは特に言うことなし。着順通りの力負け。有馬記念は出していっても行き脚が付かず中団から。直線は伸びかけたところを挟まれる致命的な不利があっての6着で、こちらは着順以上の評価が可能な一戦だった。

問題は大阪杯。2000mでポジションがとれるかという懸念はあったものの、フタを開けるとなんなくイン3確保。あとは抜け出すだけという絶好形から全く伸びず後退した。正直、外野からだと敗因が全く分からない。陣営から「カイバを残していて……」というコメントがあったので、心当たりはそれぐらい。状態が敗因だとして、中3週でどこまで上がってくるか。距離延長自体はプラスだろうが、強気にはなれない。ドゥレッツァより優先すべき要素も特にない。あ、モレイラか。

サリエラ

能力評価:★★★

得意条件:エンジンのかかり遅く、直線は長いほどいい

臨戦過程:デビューから一貫して中9週以上空けながらのレース起用。今回もダイヤモンドSから中9週。この馬なりに順調。栗東滞在

《寸評》
サのつく4文字一族こと、母サロミナの6番仔。サラキアの全妹、サリオスの半弟にあたる。デビュー戦から後半1000m57.6秒の快記録を叩き出す逃げ切りで、ポテンシャルの高さは早々に証明した。

昨年新潟記念は夏場でややデキに問題があった中で伸びきれず。エリザベス女王杯はややスローのイン前競馬を外後方から追い込んで届かず。あまりいい立ち回りができなかった。初の3000m級出走となったダイヤモンドSはルメールを背に問題なく好位で折り合いがつき、直線も伸びて2着。長丁場は合う。ただし展開やハンデ差、映像上の手応えを見てもテーオーロイヤルには完敗と言わざるを得ない。

もっともそのテーオーロイヤルが阪神大賞典を圧勝し、ダイヤモンドS3着ワープスピードが阪大2着に入った今年に限り、ダイヤモンドSのレベルは悪くない。テーオーを逆転するのは難しいと思うが、同居で馬券圏内にやってくる可能性は十分あるだろう。

ブローザホーン

能力評価:★★★★

得意条件:道悪、スタミナ勝負
苦手条件:スローの瞬発力勝負

臨戦過程:京都大賞典で心房細動を起こしたのち、日経新春杯から始動して今期3戦目。中5週

《寸評》
4歳となった昨年は初戦こそ3~4角で進路を失う不完全燃焼な競馬で敗れたが、その後順調にステップアップ。距離が忙しい&直線で一時詰まった函館記念では鋭く追い込んで3着。先日GⅠで2着に入ったローシャムパークと0.4秒差でまとめた。

日経新春杯は4歳牡馬中心のやや手薄な相手とはいえ、ややイン有利な馬場の大外を強気に追い上げて完勝。これはなかなか強い競馬だった。阪神大賞典は道中引っかかってしまい、今ひとつ伸びきれず。とはいえ1000m通過63.7秒、次の1000m65.2秒という超スローペースで、3000m級初出走の馬に「ピッタリ折り合え」というのも無理な話だろう。いい経験を積めた。

弱点はとにかく上がりがないこと。自身がマークした上がり3Fのベストは34.9秒で、レース上がり別成績も下表の通り、理想は36秒以上かかってほしいタイプ。

まあそういう意味で、阪神大賞典(レース上がり35.1秒)の負けで人気が落ちるなら儲けものだが……。京都春天で上がり36秒以上を要したのは過去10年で1回だけ、2000年以降でも4回しかない。そこまで消耗戦になるかと言われると疑問符。

サヴォーナ

能力評価:★★

得意条件:消耗戦?

臨戦過程:こちらも日経新春杯から始動して今期3戦目

《寸評》
神戸新聞杯2着、日経新春杯の2着馬だが、どちらも正直トラックバイアスに恵まれた感は否めない。菊花賞は勝ち馬から1.0秒離れた5着。この時の4着馬は次走3勝クラス7着、8着馬は次走3勝クラス8着。上位3頭を除いたレースレベルは非常に怪しい。

阪神大賞典は中盤以降ブローザホーンの後ろをマークするように運んだものの、直線に向いてから差を詰められないどころかむしろ離された。最後は格上挑戦のゴールデンスナップにもかわされる始末。正直、強調点がない。見送り。

鈴木ユウヤ

東大卒競馬ライター。中央競馬、南関東競馬を中心に情報発信している。単勝&ワイド。攻めて勝つ。