皐月賞2025 上位人気想定馬の評価
クロワデュノール
能力評価:★★★★★
得意条件:不明
《寸評》
新馬戦の勝ち時計1:46.7は2歳6月の芝1800m戦史上最速で、従来の記録を1.2秒も上回るもの。また、後半5Fが57.3秒。「2歳7月以前」「1600m以上」「レース後半5F57.9秒以下」で勝った馬はワグネリアン、グランアレグリア、セリフォス、ジオグリフ、リバティアイランド、ボンドガール、コートアリシアンに次ぐ8例目だった。数字的にはGⅠ当確級といって差し支えない。
東スポ杯は休み明けの+24キロでさすがに重かったと思うが、それでもサトノシャイニングに勝利。ホープフルSはやや内有利な馬場でも外を通って安全策。直線は楽々抜け出して2馬身差の完勝だった。デビュー2戦は軽い馬場で上がりが出る競馬を勝ってきたので中山の消耗戦でどうか……と思っていたが、全然そういう次元ではなかった。
さらに注目すべきは、ホープフルSで負かした馬たちが若駒S(ジュタ)、共同通信杯(マスカレードボール)、弥生賞(ファウストラーゼン)、スプリングS(ピコチャンブラック)、若葉S(ジョバンニ)と主要前哨戦を総なめにしたこと。また、きさらぎ賞も東スポ杯で負かしたサトノシャイニングが勝っており、この1~3月で間接的に世代のほぼ全てを制圧したことになる。未対戦の有力馬もせいぜいエリキングとミュージアムマイルくらい。安泰と見ていいだろう。相手探し。
エリキング
能力評価:★★★
苦手条件:ゲート△で多頭数は?
《寸評》
6月京都のいわゆる「宝塚新馬」に登場。重馬場のためタイムは参考にしにくいが、ラスト11.8-11.5-11.3の加速ラップで勝利した。2戦目は5頭立ての少頭数。スタートが遅く一度最後方まで下がると、今度は逆に行きたがって外から浮上。ジョバンニに先んじて早め先頭に立ち、そのまま押し切った。のちのGⅠ・2着馬を破った事実は評価できるが、1000m通過64.1秒からレース上がり33.6秒のスロー前残りでこれも能力が測れるレースとは言い難い。
京都2歳Sも8頭立ての少頭数。ゲート内の駐立は少し怪しかったがスタート決まって4番手。4角の勝負所で反応の悪さを見せたが、残り200mくらいでエンジンがかかるといい脚を使い、ラスト11.6-11.5-11.4の加速ラップで再びジョバンニを破った。川田騎手曰く「なかなか動きが出てこなかった」「無理して動かして」という競馬だった。
この時の勝ち時計は2:00.9。ペースが違うとはいえ同日未勝利(シュバルツマサムネ)よりタイムが遅く、同コースで行われたミュージアムマイルの黄菊賞(2:00.0、前後半61.7-58.3)などに比べると数字的なインパクトを欠く。
また、これまで少頭数ばかりだったので問題になっていないが、ゲートが割と怪しくて遅い。反応の鈍さもあって操縦性は高くない。多頭数の中山には不安を残す。骨折明けというのも減点。
サトノシャイニング
能力評価:★★★★
苦手条件:折り合い△、右モタれ
《寸評》
デビューから3戦2勝。クロワデュノール以外には負けておらず、着差で言うと今のところ「最もクロワデュノールに迫った馬」。ただ、その東スポ杯はクロワが+24キロで万全でなかった上に、1000m通過60.9秒からのレース上がり33.4秒で前が有利な展開だった。これで勝ち切れなかった事実は重く、着差0.1秒以上に力の差を感じる負け方であった。
きさらぎ賞は1000m通過58.7秒のハイペース。序盤やや引っかかったが、直線は右にモタれるのを矯正しながら追って3馬身差の完勝。2着リンクスティップが桜花賞3着、3着ランスオブカオスがチャーチルダウンズC勝ちとレースレベルも高い。
折り合いに難しさがあるので200m延長が歓迎ではないが、前走で控える競馬を経験させたし、ペースが流れやすい皐月賞なら対応可能だろう。逆転までは厳しいと見るが、その相手候補としては有力視。
ジョバンニ
能力評価:★★★
得意条件:不明
《寸評》
新馬戦はラスト11.6-11.2の加速ラップを勝利。小倉芝1800mの2歳新馬でラスト11.2以下だったのはクロノジェネシス、ピースオブエイト、ドウデュースに次ぐ4例目であった。
野路菊Sと京都2歳Sでエリキングに敗れたが、どちらもスローペースを差し届かなかったもので、この2頭の勝負付けは済んでいない。一方、ホープフルSの2着はやや内有利な馬場で上手にインを通してきたもの。終始安全策だったクロワデュノールとは着差0.3秒差以上に内容の差がある。
若葉Sは休み明け&大外枠でもキッチリ勝ち切った点で偉いが、破った相手は2頭除いて1勝馬。メンバーレベルは高くない。戦績のキレイさで上位人気も予想され、イマイチ手を出しにくい。
ヴィンセンシオ
能力評価:★★★★
得意条件:ペース、馬場不問
《寸評》
2代母シーザリオ、つまり近親にエピファネイアやリオンディーズ、サートゥルナーリアがいる良血馬。新馬戦は1000m通過67.0秒の超スローペースで何も参考にならないが、そこから一転ペースが締まった葉牡丹賞もあっさり勝った点でセンスの良さを感じる。
前走の弥生賞は前日夜にまとまった雨と雪が降り、稍重発表ながら同日湾岸Sでレース上がり37.6秒を要するタフな馬場。序盤は逃げていたが、ファウストラーゼンのマクりに付き合わず2番手に控え、素直に4角からスパート。一時は前に出たようにも見えたが、差し返されてクビ差2着だった。レースの後半11.5-11.7-12.4-12.1-12.7(上がり3F37.2秒)のロンスパ消耗戦で粘り負け。相手の土俵だった。軽い馬場なら着順は変わっただろう。
爆発的に強いパフォーマンスを見せたレースはまだないが、ドスローからの2Fキレ比べだった新馬戦、高速馬場の持続力勝負だった葉牡丹賞、タフ馬場のロンスパ消耗戦だった弥生賞、いずれも崩れていない対応力の高さは見事。たとえるならベラジオオペラに似た万能型で、皐月賞はフィットする。楽しみのある1頭。
ファウストラーゼン
能力評価:★★★★
得意条件:道悪、消耗戦
苦手条件:高速決着?
《寸評》
新馬と2戦目はモタモタして操縦性の悪さを感じさせる内容だったが、ブリンカーを着けたホープフルSから一変した。
ホープフルSは最初の直線で両隣から挟まれる不利があって前半は後方待機。スローペースの向正面で一気にマクりに動いて先頭に立ち、そのまま3着に粘り込んだ。マクったのは1000m~1200m=レースラップ12.0秒の区間であり、自身のラップは推定11.1~11.2秒くらい。残り5Fからこれだけ急激にスパートしたら普通は止まる。この仕掛けでジュタやクラウディアイに差されなかったのは地味に偉い。
続く弥生賞はホープフルSよりさらに早い残り1100mからの仕掛け。向正面11.5-11.7を踏んで先頭を取り切った。直線は一度ヴィンセンシオに出られたようにも見えたが、ラスト12.7を要して相手がバテると差し返して勝利した。マクった側が差し返すというなかなか意味不明な勝ち方をしている。
以下は経験則に基づく持論だが「競走馬の全力疾走は通常600mまで、小出しにして800mが上限」と思っている。そのため残り5F区間に急加速するラップだとたいてい差し(仕掛けを待った馬)有利になるのだが、この馬は他馬のスタミナを削り切って自分は残っている。異端。ゲームチェンジャーといえる存在。今回も自分の世界に引きずり込めば一発あっておかしくない。
ただし消耗戦に特化した馬なので、弥生賞は道悪が味方したのも確か。1分57秒台~58秒台が出るような馬場になると相対的にパフォーマンスを落とす可能性が高い。