「そろそろ本気出す」という言葉は「身の程を知らない怠け者」の決まり文句と受け取られ、よくて嘲笑、悪ければ糾弾の対象となるわけだが、しかしこの先もずっと本気を出さず現状に満足して惰性の中で生きる人間よりは遥かに尊いのではないか? と思う今日この頃である。
会社を辞めてフリーランスを名乗り、競馬ライターとも、ブロガーとも、予想家ともつかない曖昧な立場で活動して1年あまりが経過した。
競馬は最大にして最高の趣味だが、しかし今は単なる趣味でもない。「好きなことで生計を立てる」という道に挑んだわけで、「マネタイズできなくてもいいや」とは思っていない。
別にアコギな手を使ってまで誰もがうらやむ大金を得たい、という野心もないが、自由気ままかつ競馬に充たされた日々を継続していくだけの基盤は要る。それすら叶えられないなら「フリーで食っていくには実力不足だった」というだけの話であり、大人しくリクルートスーツに身を包んで再就職活動でもするべきだろう。
*****
まだスーツは着たくないので色々腹案を練った。
主にコンテンツの配置転換と、先日ちらっとXの方でつぶやいた「後払いの予想記事」についての話。
まず宝塚記念のあと処遇が宙に浮いていたYouTubeから。結論から先に書くと、ここはほぼ「戦略的撤退」という形になる。いわゆるSWOT分析(自社の強み弱みと環境要因がうんぬん、みたいなやつ)で、動画分野に自分の強みがない上に競合が強い。
実は直近数本の動画でインプレッション(再生回数ではなく、そもそもユーザーにサムネが表示される回数)が極端に少なくて困っていた。表示されないことには当然、再生されるわけもない。伸ばすためには原因を解明し、SEO対策の要領でYouTubeアルゴリズムを攻略することになるが、それも専門でやっている企業には勝てない。収益化する前に干からびてしまう。
まあ個人でやっていて「全頭評価」のような1本あたり40分尺のガッツリ手間がかかる動画では数も打てないし、だいたい競馬予想というコンテンツは消費期限が短すぎる。今後動画を出すとしたら、競馬に絡めた雑学とかゲームとか、短い単発モノで非・時事ネタになるでしょう。
とはいえ「全頭評価動画」で出していた情報は価値あるものだったと思っているし、あそこまで地道に突き詰めた動画ってそう存在しないんじゃないかという自負もある。実際、上半期のGⅠを大幅プラスで終えられたのは、アレを作るために手間暇かけて下調べと分析をした成果だと思う。
あれをヤメるのはもったいない。ただ、娯楽性に乏しくてYouTubeには向かない。よって今後はnoteの方にコンバートする。
*****
有料で予想を売ることに関するわたしのスタンスは、まずまず下記のポストに集約されている。
「競馬予想記事」の売買はもちろん双方の合意に基づく健全な経済活動であるものの、商品の特異性として、(一般的に)その「価値」や「満足度」がレース後に確定するという点が難儀である。
買い手はおおむね“的中”という価値を求めて安くないお金を払うのだろうから、その結果が得られなければ不満を抱くのは仕方のないことだ。逆に売り手はイヤな話、「売り逃げ」ができてしまう。レース前に大口を叩き、期待を煽ってたくさん売ってしまえば、結果がどうなろうと知らぬ存ぜぬで懐は温まる。
競馬というのは外れることがある。売り手が「誠実な達人」であっても、買い手はレース後に後悔することがありうるし、そのヘイトを向けられた売り手が心を痛めることもあろう。それは両者にとって不幸なことだ。
だったら、後払いにしたらいいんじゃないか?
予想が気になる天下往来の皆様、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。拙者親方と申すは、お立会いのうちにご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方……。と演じて、「お金を払うに値する予想だった」と思う方には、納得づくで購入してもらう予想記事。それなら双方よしの売買ができるのではなかろうか。
善は急げ。思い立ったが吉日。近いうちにnoteを使ってそんなシステムを実験してみます。売れ行き次第ではまた別の形も試す必要があるだろうけど。その時は、ひとまずよろしくお願いいたします。
最後に身の上話。最近、ここでは書けない色々な動きが身の回りにあって、改めて己の価値観と人生設計について考える時間が多かった。そして気が付いたが、わたしはどうやら「好きなことで食っていく」という言葉を甘く見ていた。いつまでも安全地帯から安穏と、安易に日々を浪費しているわけにもいくまい。
さ、そろそろ本気を出しますか。