第3回です。前回はコチラ。
その前回にも軽く頭出しをした通り、POGにおいて「速攻作戦」の有効性は軽視できない。いや、厳密には「ダービー馬をとったら景品が当たる!」みたいなルールだと話も違うのだが、単純に指名馬の賞金合計額で競う一般的なPOGならとにかく早期デビューが正義である。そりゃそうだ。3歳5月末という一律のタイムリミットがあるんだから。
実際に確認する意味で、データを出してみた。「現3歳世代」「オークス終了時点」「JRAの本賞金のみ」という大雑把な調査だが、こんな感じになる。
6月デビュー馬の1頭当たり獲得賞金は1045万。秋デビュー組と比べるとほぼ2倍だ。期待値が2倍違うとなると無視できない。打率2割のバッターが打席に立つか、4割のバッターが立つか。それくらい差がある。
ちなみに、よく言われる「早生まれが有利」の方もデータを出してみたが、こんな感じ。
確かに早生まれは有利だが、デビュー月の重要度に比べると大した問題ではない。5~6月生まれはさすがに避けるべきだが、1月と4月は1.37倍の差。許容できる範囲だろう。
競馬メトリクス……もといセイバーメトリクス的な発想だと、とにかく6月デビュー馬(できれば早生まれ)で10頭なり15頭なり指名を埋めてしまうのが正解となる。といってもこれはあくまで平均値。「秋デビュー予定の評判馬」と「無名の6月デビュー馬」どっちの期待値が高いかはまた別の議論を必要とするが……。
さて。前提はこんなところで切り上げよう。どうやら6月デビューらしいぞ、という馬の中から何頭かピンと来た馬をリストアップしていく。
なおデビュー想定はインターネットの海を駆けずり回って集めた情報に過ぎないので、信憑性のほどは分かりません。悪しからず。
◆ウインアレース(牡、父ウインブライト、母ウインアルテミス、美浦・畠山、コスモヴューF)
→ウインアルテミスは未勝利引退となったが、産駒は若駒S勝ち馬ウインアグライアなど3頭すべて期間内勝ち上がりと上々の繁殖成績。5月16日の追切ではラスト11.3をマークした。
ウインの馬は近況がネットで見られるので確認すると、松岡騎手いわく「じっくり進めている」「課題はコーナリングと口向き」「能力はあるのは分かっていた」「気性面で難しいところがある」「そんな中でも初戦から結果を出さないといけない」「一緒に大きいところを目指せたら」とのこと。とはいいつつ、ウインブライトも評判の割に初戦は動けなかったので、新馬で負けても悲観することはないと思う。
◆スターウェーブ(牡、父Kingman、母コスモポリタンクイーン、美浦・武井、ノーザンF)
→コスモポリタンクイーンは16戦2勝、目立った戦績もないようだが、その全姉が英GⅠを勝ったアラビアンクイーンという良血馬。Kingmanは本邦だとシュネルマイスターが代表産駒。デビューした馬の中央勝ち上がり率50.0%なので、優秀なのは間違いない。
なんといっても動いている。5月15日にウッドで4F50.8の猛時計をマーク。騎手騎乗、先導馬に追い付かずという点を差し引いてもお釣りがくる。マイルまでかな。
◆ウインイザナミ(メス、父モーリス、母コスモネモシン、美浦・上原、コスモヴューF)
→母はフェアリーS、新潟記念の勝ち馬。その産駒は6頭がデビューし4頭が勝ち上がっている。5月15日にウッドで4F51.4-11.6の時計をマーク。かなり内を回っていたこと、4角で内に逃げてしまった点は気になるが、立て直されるときっちり反応はできた。能力はそれなりにありそうで、あとは気性が実戦にいってどうなるか。
◆ミリオンローズ(メス、父スワーヴリチャード、母マンビア、美浦・萩原、ノーザンF)
→母はフランスのGⅢ勝ち馬で、兄姉は6頭中5頭が勝ち上がりと高打率。5月15日はウッドで年長馬と併せて手応え十分に追走同入、ラストを11.8-11.4でまとめた。ノーザンFのスワーヴリチャード産駒は現3歳世代で20頭がデビューし、アーバンシック、レガレイラ、アドマイヤベルが出ている。当然、今年も期待がかかる。
◆ユイノオールイン(牡、父モズアスコット、母シンデレラ、美浦・竹内、杵臼牧場)
→母は未勝利馬ながら、近親にディアマンミノルやトラストワンといった芝の長めで活躍した馬がいる。あ、サングラスポテトもこの一族なんだ。美浦はリニューアルの影響か坂路で速い時計を出している2歳があまりいないなか、こちらは5月初頭から上々の時計。コツコツ稼いでくれそう。
◆エンブロイダリー(メス、父アドマイヤマーズ、母ロッテンマイヤー、美浦・森、ノーザンF)
→3歳母にビワハイジ。つまり近親にはブエナビスタ、アドマイヤオーラ、トーセンレーヴ、ジョワドヴィーヴル、サングレアルあたりがいる。5月16日にウッドで52.4-11.5をマーク。
◆ダノンフェアレディ(メス、父キズナ、母メチャコルタ、栗東・橋口、ノーザンF)
→母はアルゼンチンの1000ギニー勝ち馬。半兄ダイヤモンドハンズは新馬勝ちから札幌2歳S3着、半姉エリカエスティームはエルフィンS3着とそこそこ走っている。既に追切をかけられて時計も悪くない。ダノックスでこの厩舎という選択がちょっと気にならなくもないが。
◆ショウナンザナドゥ(メス、父キズナ、母ミスエーニョ、栗東・松下、ノーザンF)
→母はAW7FのGⅠ・デルマーデビュタントSの勝ち馬。その産駒はミスエルテ、ミアネーロの重賞馬2頭を含め6頭すべてが勝ち上がっている。以前キズナ産駒を取り上げたときにすっかり抜けていたが、母が短距離GⅠ勝ち馬というのはキズナの成功パターンにも合致する。まだ目立った時計こそないが、開幕週の京都でデビュー想定。今週の動きに注目したい。
◆カムイカル(牡、父シルバーステート、母エトピリカ、栗東・福永、タバタファーム)
→母はJRAで4勝。産駒は6頭中3頭が勝ち上がり。4月中旬の時点で坂路53.1を出すなど、精力的に乗り込まれている。厩舎への期待も含め、短いところでの活躍を見込む。
◆タガノサダフ(牡、父ノーブルミッション、母タガノアイル、栗東・斉藤、八木牧場)
→母は未勝利引退だが、近親にコイウタ&ユラノトの母仔がいる。父ノーブルミッションはあのフランケルの全弟で、やや遅咲きながら最終的にGⅠを3勝した。5月15日にはウッドで4F53.2-12.2。ラップにも見た目にも最後失速して遅れたのはやや不満か。中位以降での指名を検討する。
◆キトンインザスカイ(メス、父シスキン、母メジロトンキニーズ、栗東・高野、レイクヴィラF)
→半兄にトリオンフ、半姉にクールキャットがいる。ただし、さすがに母20歳時産駒という点は気になる。父シスキンはアイルランドのGⅠ・2勝馬。まだ目立った時計はないが、ジョッキーが高評価とのこと。開幕週京都でデビュー想定。
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今回はここまで。実質これでラストですが、来週もう1本だけオマケがあるかも。