JRA全10場踏破へ
わたしが初めて競馬場に行ったのは(覚えていないが)クロフネの武蔵野Sらしく、今から24年も前の出来事になる。時が流れて競馬場への出入りが社会通念上許される歳になると、中山、東京、札幌、新潟、小倉を大学生のうちに踏破し、大阪で働いていた頃に中京、阪神、リニューアル京都をクリア。昨年春に福島競馬場へ行って「JRA全10場踏破」へリーチをかけた。
サラリーマンを辞めてしがないフリーランスになり、ここ2年ほど「金はないが時間はある」生活を送っているが、今後右肩上がりに仕事が増えていくという希望的観測に基づけば、残りの人生の中で今日が最も若く、そしてヒマな1日という結論が導き出される。善は急げ、思い立ったが吉日、メメントモリ、今日現在を最高値で通過していこうよ、ということで残る1場・函館に行くことにした。
函館記念が開催される6月28-29日の週末は函館マラソンのため混雑が予想され(=宿が高い)、7月も観光需要が増加するのか、なかなかダイナミックなプライスが設定されていた。今回の旅の目的はあくまで「函館競馬場で競馬をすること」なので、かえって迷うことが減り、日程は安上がりに済む21-22日ですんなり決定。ちなみに日本旅行からJR往復券(東京⇔函館)と宿2泊で4万6000円だった。もちろんホテルのグレードを上げればもう少し予算はかかるだろうが。
1日目 到着即ラッキーピエロ。函館山は晴れているか
土曜日の朝イチで自宅を出発し、東京駅から北海道新幹線に乗ってえっちらおっちらと北上。移動中は特に書くような事件もないが、車内でPOG指名馬ダノンオブアイデアの大敗を確認。6月にして既に今年のPOGはタコ負けを覚悟しつつある。まあ藤原厩舎だし、調教過程を見ても「まずは経験」の一戦だったろうとは思うが……。
電車に揺られること4時間、新函館北斗駅に到着。乗り換えホームに降りてすぐ、あまりの涼しさにビックリ。東京で言う3月くらいの気候だろうか。朝に家を出たときはうだるような暑さだったが、ここは半袖Tシャツ1枚だとむしろ寒いくらい。これが北海道か。ケッペンの気候区分で言うところの「温帯」である本州と違って、函館市は「亜寒帯湿潤気候」に分類されるとか。
そこからはこだてライナーに乗り換えて函館駅へ到着。


この時点で時刻は14時ちょっと前だったが、ホテルのチェックインまで少し時間があるので、函館名物のハンバーガー屋「ラッキーピエロ」でさっそく昼を食べることにした。その圧倒的な知名度と駅前の好立地から並びを覚悟していたが、意外にも15分くらいの待ち時間でオーダーに辿り着いた。1番人気のチャイニーズチキンバーガー、松(チーズ入り)を注文。我ながら写真が上手くないな……。


味としては甘めのタレを絡めた大ぶりの唐揚げをバンズで挟んだような感じ。確かにコレは美味い。そしてサイドのポテトもアツアツのホクホクでなかなか侮れない。「ガラナ」という聞きなじみのない飲み物をつけた。よく分からんが、オロナミンCみたいな味がする。
腹ごしらえが済んだところで一度ホテルに寄り、荷物を置いて「ベイサイドエリア」に繰り出す。が、ここで2つ誤算。まず1つ目の誤算は雨と風。予報では「小雨程度」のはずが存外しっかり降っており、また海沿いだからか風も強い。携帯していたチープな折り畳み傘はひっくり返ってしまい、およそ使い物にならなかった。
「100万ドルの夜景」で知られる函館山にも向かったが、ロープウェイ乗り場には山頂の様子を映したライブモニターが設置されており、スタッフの方から「雨のため視界不良です」とのお知らせ。せっかくここまで来たからと1800円のチケットを買って一応山頂に上がったが……。全体的に霧がかっていて絶景とは言えなかった(そもそも、夜景を見るにしては時間帯も早すぎた)。

もうひとつの誤算は自分の計画性と体力のなさ。ホテル⇔函館駅⇔ベイサイドエリア⇔函館山ロープウェイ山麓あたりのスポットがいずれも徒歩15分くらいの距離感だったので「バスを待つよりは歩いた方が早いな」という状況が続き、初日は2時間近く立ちっぱなし歩きっぱなし。普段モニターの前で生活しているわたしの足は初日にして音を上げ、これが最終日まで尾を引くことになる。
夜は函館駅近くの「海がき」というお店へ。明日の予想もしなきゃいけないから軽く一杯だけ、と思って入店したのだが、まずお通しで出てきた松前漬けが美味い。正直言ってイカがあまり好きではないのだが、これはいわゆる「イカ臭さ」が全くない。カルチャーショック。となれば否が応にも後続への期待が高まる。まぐろの刺身2種盛りといくらのしょうゆ漬けを頼んだが、どちらもやはり絶品。さすが函館。レベルが違う。感動した。


そのまま前後不覚になるまで飲みたいところだが、鋼の精神力でビール1杯&日本酒1合で耐えた。なにしろ明日は函館競馬と戦わなければいけないのだ。後ろ髪を引かれながら退店。あとは予想してブログを書いて1日目は終了。
2日目 函館競馬の洗礼と大門横丁はしご酒
セイコーマートで買っておいたインスタント味噌汁を作って胃に流し込み、いざ競馬場へ向かう。函館の街には市電=路面電車が走っており、それに20分ほど乗る。
市電は速度がバスより遅く、その割に電車なのでガタゴト揺れる。正直、乗り心地はそんなによくない。だったらバスだけあればよさそうなものだが、函館に路面電車の文化が残ったことになんらかの合理性があるのだろうか。今度調べておこう。
函館競馬場に着くと新選組風の衣装を身にまとったターフィーくんがお出迎え。650円に値上がりした優馬に面食らうも、クリアファイルがついてきたのでヨシとしよう。


いざ入場。パドックを含め、建物は全体的にレンガ調のおしゃれな造りだ。

直線距離がJRA最短だけあって、やはり府中などに比べると目に見えてコンパクト。端から端まで労せず歩けるくらいの規模感だった。この日も微妙に雨がパラつく時間帯があったり、風が吹いたりして、やや肌寒い。しつこいようだが酷暑の東京と同じ国とは思えない。

さて、肝心の予想は難航。1レースから豆券でぼちぼち戦っていったが、前日夜の雨の影響もあって芝はやたらと外差しが届き、そして波乱頻発のコンディション。ほとんど当たらなかった。結局は事前に予想した東京9レースの◎トクシーカイザー◯スズカコーズに助けられるも、後続がなくトータルではマイナス。個人的な経験則として、旅打ちはたいてい負けるようにできている。現地で適当に考えて買う馬券より、飲食に使う金の方がよほど期待値ある。
時系列は前後するが、3レースを見届けたあたりで朝と昼を兼ねて場内のフードコートへ。函館の有名なラーメン屋「あじさい」が店を出していたので、そこで「味彩塩拉麺」をいただいた。キリっとした塩味で飽きの来ないスープ、舌触りと喉越しがよいツルリとした麺、大変美味でございました。市街にある普通の店舗へ行くと多分行列だと思うが、競馬場内なら昼休み以外は待たずに食べられる。地味にライフハックかもしれない。

ちなみに、場内飲食はそのフードコート、指定席フロアのレストランに加え、キッチンカーも多数出店していた。食べ物のバリエーションには十分すぎるほど富んでいる。
最終レース終了後、市電に並ぶ列を横目に徒歩で湯の川方面へ。10分ちょっとで温泉街エリアに辿り着く。道中には無料の足湯も設置されていた(写真もとったが、先客がガッツリ写ってしまったのでボツ)。温泉宿の日帰り入浴で露天風呂をゆったりと満喫した。
1時間ほど湯船につかり、敗戦の傷を癒やしたところで、今度は市電に乗ってきびすを返し、函館駅へ。駅周辺は(当たり前だが)飲食店の充実した区域で、そこに「大門横丁」というのがある。ここには小さな飲食店が20店舗以上密集している。

初日と違って遠慮することもないので、この日はとことん呑むつもりでスタート。まずは「函館ザンギ」というお店から。揚げたてアツアツ、サクサクでジューシーなザンギに舌鼓。開幕は冷えたビール。そして、やはり唐揚げと相性がいいのはハイボール。店員さんが「メガジョッキもあります」というので、もちろんそれに従った。


2軒目はやっぱり海の幸!ということで寿司屋に。刺身&寿司&酒1杯のセットを堪能。サクっと終えるつもりが、結局ここも日本酒を追加してしまった。魚が旨すぎるので仕方ない。あるのがいけない。


だいぶ酔いも回ってきたが、北海道に来たからにはジンギスカンを食べずに帰れない。3軒目に入り、独特の風味がクセになるマトンを辛めのタレでいただく。ついクセで一杯目にビールを頼んでしまうが、こういう味の濃い食べ物には2杯目のレモンサワーが正解。

もう1軒……と言いたいところだが、このあたりでアルコールと胃袋がキツくなって手じまい。学生の頃と違って、酒にすっかり弱くなったなあ、最初の店のメガが余計だったなあ、と反省しながら撤収。千鳥足で宿へとふらふら歩く。6月でも函館の夜風にはイヤな湿り気がない。
3日目 五稜郭とハセガワストアの「やきとり弁当」
最終日。早く目が覚めたらチェックアウト前に朝市を見に行こうと考えていたが、さすがに深酒の反動があって断念。いや、正確に書くと飲みすぎて逆に5時くらいに目が覚め、見物に行く元気もなくはなかったが、足の痛みに気勢を削がれた。日頃の運動不足ですっかり軟弱になったものだ。まあどのみち、朝から食欲旺盛というわけでもなかったし。
そんなわけで時間ギリギリまで惰眠をむさぼり、チェックアウトを済ませて五稜郭へ。ひとしきり周縁を歩いて散策したあとは隣接する五稜郭タワーに移動。展望台からは五稜郭はもちろんのこと、函館山、そして遠くにうっすらと函館競馬場も見えた。

まだ朝を食べていなかったので、ハセガワストアで「やきとり弁当」を買う。やきとりと言いつつ鶏ではなく、豚肉の串焼きが米と海苔の上に置かれている。レジに注文用紙を出し、そこから調理してもらうシステム。味が何種類かあったので「うま辛」を選び、待つこと5分くらいで出来上がり。さっそくイートインで実食してみると、柔らかくて旨味のある豚肉はなるほど、確かに一介のコンビニ弁当の域に留まらない。ただ、想像以上に辛かった。こういう時は好みを出さずにベタを選ぶべきだなとやや反省。


これで2泊3日の旅程が終了。その後は函館駅に移動してタリーズでこのブログを書き始め、今は北海道新幹線の車内にいる。
初日の雨でいいコンディションの夜景を見られなかったことは残念だが、それ以外はおおむね大満足の旅だった。
函館の街はコンパクトで、バスや市電でそこそこ小回りも利く。函館駅⇔五稜郭⇔函館競馬場⇔函館駅のトライアングルはそれぞれ公共交通機関を使って30分ずつくらいで行き来ができる。観光がしやすい。なにしろ函館競馬が開催している夏場は本州に比べて気候が圧倒的に快適で、正直それだけでも行く価値があると思う。
2日目の「競馬場→湯の川温泉で日帰り入浴→市電で移動→大門横丁はしご酒」という行程は我ながら理想的な立ち回りだったと思う。旅打ちに行く方はぜひ参考にしてみてください。以上。乱文ながら函館旅行記でした。