有馬記念
スターズオンアース
能力評価:GⅠ複数勝利級
得意条件:中長距離、外回り系コース
苦手条件:マイル、内回り系コース
近走内容と臨戦過程:秋初戦として予定していた天皇賞を回避。ジャパンCで始動して中3週で2戦目。普通に考えれば上積み見込めるローテ
《寸評》
3歳クイーンCまでは右にモタれるクセがあったりして重賞級の1頭に過ぎなかったが、桜花賞を制したあたりから成長が著しい。秋華賞は故障明けのぶっつけ、かつスタート直後に挟まれる不利がありながらも猛然と3着まで追い込んだ。
その後大阪杯、ヴィクトリアマイルはどちらもこの馬の適性からズレた条件。特にVMは数々の中距離GⅠ馬を沈めてきたレースであり、そこを先行してマイルのスペシャリスト相手に3着は素晴らしい地力を示唆するもの。生涯2度目の適距離だった前走ジャパンCはイクイノックスこそ別格ながら、もう1頭の怪物リバティアイランドとは0.1秒差に踏みとどまった。
鞍上には中山芝2500mの鬼・ルメール。ジャスティンパレス、スルーセブンシーズにも乗れる立場だったであろうルメールがこの馬を選んだという事実は重い。よほどのクソ枠を引かない限り、馬券圏内への好走は確実と見たい。
タスティエーラ
能力評価:世代限定GⅠ級
得意条件:器用さ、しぶとさ生きるレース
近走内容と臨戦過程:日本ダービー以来、ぶっつけの菊花賞を使い、秋2戦目。今年の上位人気馬は他馬もゆとりローテ多いが、その中でも消耗度の少なさという意味ではトップか
《寸評》
上がり33.7秒を使ってタッチウッドやダノンザタイガーの後塵を拝した共同通信杯が示す通り、本質的には東京で速い上がりを使う競馬は合わない。レース巧者でバテない、わたし風に言うと「S持続型」の典型。例年なら皐月賞と菊花賞向き、むしろダービーこそ消したい類の馬。ただし今年のダービーは2番手以下ドスローの超特殊レースになったので、展開利で押し切ってしまった。
中山の消耗戦は大歓迎のタイプ。適性は合うが、あとは古馬との比較でどうか。現3歳世代は2歳時から今春にかけて、(重賞級は)牝馬>牡馬で推移していた。ドゥレッツァはいい馬だけど、古馬3勝クラスでは0.1秒差勝ち。それに0.6秒離されてしまった点はどうにも。ベラジオオペラやノッキングポイントも物差しにすると、春クラシック組≒古馬GⅡくらいのレベル感か。このあたりはやってみなければ分からず、推測の域を出ないが……。
ジャスティンパレス
能力評価:GⅠ級
得意条件:不明
近走内容と臨戦過程:秋初戦の天皇賞から2戦目。こちらもかなり消耗度の小さいローテ
《寸評》
条件戦をジワジワ勝ち上がって6歳12月でついに重賞を獲ったのが半兄のアイアンバローズ。それに似て晩成型のところがあるのか、3歳春と3歳秋のパフォーマンスが全く違うし、さらに4歳春のパフォーマンスもまるで違う。どんどん強くなっている。
宝塚記念時点までで自身の上がり自己ベストは34.2秒。消耗戦に長けたタイプで東京芝2000mはどうかと思っていたが、ここで上がり33.7秒の末脚を発揮してイクイノックスの2着、1.55.6という好時計で走り切った。4歳春→秋でもさらにレベルアップしている可能性が高く、過去のイメージで取り扱うと痛い目を見るかも。重視。
ソールオリエンス
能力評価:世代限定GⅠ級
苦手条件:小回り
近走内容と臨戦過程:セントライト記念→菊花賞と使って秋3戦目。オーソドックスなローテだが、今年はもっと余裕残しの馬が多く。
《寸評》
京成杯を勝った際は4角で大きく膨れた。右の小回りだとスピードを制御しながら上手に加速することができず、例年なら皐月賞では完消しするような馬。ただし今年の皐月賞は大雨で馬場の内側が終わり散らかし、さらにハイペースもあって外を回ったロスが帳消しになる特殊レース。話はズレるけど、例年の感覚だとこっちがダービー馬タイプでタスティエーラが皐月賞馬なんですよね。
今回も中山なので、当然そのコーナリングの弱点は付きまとう。ただ、有馬はペースによっては2周目4角で既に先行勢の脱落が始まっており、大して踏まなくても自然に位置が上がっていく場合がある。そういう展開になってくれれば。タフ差しの競馬自体は得意なのでね。もちろんタスティエーラと同様に、世代レベルの問題は別途考慮する必要あり。
ドウデュース
能力評価:GⅠ好走級
得意条件:高速馬場
苦手条件:タフ馬場
近走内容と臨戦過程:ドバイターフ取消後、天皇賞→ジャパンCと使って秋古馬三冠皆勤。
《寸評》
秋古馬三冠皆勤で有馬に出走した馬は近10年で【2-0-0-19】。タフネスの権化だったキタサンブラック、叩き良化の名牝ジェンティルドンナの2頭以外は馬券になっておらず、ちょっと分が悪い。
まず母系が短距離質という背景があり、ダービーは2.21.9の高速決着で勝利。スピードが武器。逆に、フォワ賞と凱旋門賞は全く走れなかった。開幕週でパンパン良馬場だった京都記念は強かったが、冬枯れの中山となるとまた話は変わる。この馬にとっては東京芝2000mや東京芝2400mの方が明らかに得意な条件だった。
有馬記念は菊花賞の好走馬が活躍していることからも分かる通り、どちらかと言えばステイヤー資質を問うレース。かなり適性に反したレース起用であり、地力でどこまで頑張れるかという一戦。馬券は見送る。
スルーセブンシーズ
能力評価:GⅠ級
得意条件:中山。広いコースがダメとは言わないが
近走内容と臨戦過程:秋初戦は凱旋門賞に挑戦。例年と違う軽い馬場であり、ダメージは懸念しなくてよさそう。
《寸評》
中山【4-1-2-0】のコース巧者。中山牝馬Sを勝った時の数字が素晴らしい。中山芝1800mを走破時計1.47.0以下、上がり33秒台で勝った馬は歴史上ヴィクトワールピサ、ウインブライト、スルーセブンシーズの3頭しかいない。
宝塚記念は相手の状態面や進路取りもあったとはいえ、イクイノックス相手にクビ差。本格化以降のイクイノックスを最も追い詰めたのがこの馬である。
凱旋門賞は公式のラップが出ていて、1000m通過が62.75秒、ラスト3F11.79-11.11-11.07(33.97)とのこと。勾配の関係もあるとはいえドスローの瞬発力勝負で加速ラップ。欧州の重い馬場、持続力勝負に対応できそうなタイプを連れて行ったら、今年に限って真逆の競馬になってしまった。得意な形とは全く違うなか、よく頑張っている。強いて言えば課題は距離。