競馬における「二つの予想」 永久に負け続けるための冴えたやり方

競馬における「二つの予想」

競馬で勝つのは非常に難しい。

したがって勝つ方法を答えるのは大変だが、負け続ける方法ならいくらでも紹介できる。

その一つが、目の前のレースに対してただ受動的に予想し、参加し続けることだ。

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競馬には「二つの予想」がある。

ひとつは当然、レースの予想。各馬の情報を収集し、オッズを見て、どの馬を買ってどの馬を買わないのかを考える。とまあ、それだけで既に勝てている人には「参りました、わたしから申し上げることは何もございません」となるのだが、おそらくそういう人は多くない。

競馬におけるもう一つの予想を、「メタ予想」とでも名付けておく。

つまり、馬券というゲームに対し、「どういう着眼点を持ってどこにどういうリソースの注ぎ込み方(時間、金銭両面)をすれば黒字を達成できるのか」と問いを立てる。そしてこの問いに対して「こうではないか?」と仮説を立てることがメタ予想だ。

馬券という競技はほぼ全員が「勝てない人」からスタートする。そこから「勝てる人」になるには、このメタ予想に取り組まなければならない。人によっては「フォームの確立」なんて言うこともあるが、言い方はなんでもいい。要するにそれが必要なのだ。

しかし、メタ予想に本気で取り組んでいる人はどのくらいいるだろう。レースが終われば、また次のレースの予想にフォーカスしていないだろうか? もしそうだとしたら、それは極めておかしな話だ。

たとえ話をしよう。

あなたは高校生で、まだ三角関数を履修していないとする。その状態で高校3年生に混じって模擬試験に挑むが、当然、正しい答えを導出することはできない。

であれば、次に向けてやるべきことは「解けなかった原因」が「三角関数を知らかったから」だということを理解し、「三角関数を学んでくること」になるはずだ。

それなのに、競馬ファンの場合は「解けなかったこと」に悔しさ感じ反省こそしても、「三角関数」を学ばずに次の試験=レースに参加し、必死に答えを求めようとする。

普通に考えたら実に奇妙なことだが、ここに陥っている人が多いと思う。

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昨今、有料で予想を販売する方がとみに多い。それはつまり、購入する方も多いという意味になる。

別にそれ自体を批判する気はないし、双方納得の上で行われる経済活動にわたしが口を挟むのもおこがましい話だ。

しかしながら、個人的には「レース予想」の参考になる情報より、「メタ予想」の参考になる情報にこそ有料級の価値があると思っている

たとえば誰かの「エリザベス女王杯予想」をわたしが1レース500円で買うことは絶対にない(そして多分売ることも)が、予想の腕に覚えがある人の「勝てるようになるまで、どんなことを考えて、どういう道筋を辿ったか」というノウハウや自伝なら2000円でも読みたい

結論。上手な予想家の方は、レースの予想もいいですが、馬券というゲームについてもっと持論を語ってくれたらいいのに、と日々思っている。そしてきっと、そっちの方が面白いんじゃないかと感じるわけでございます。

鈴木ユウヤ

東大卒競馬ライター。中央競馬、南関東競馬を中心に情報発信している。単勝&ワイド。攻めて勝つ。