WASJとは?
WASJとは「ワールドオールスタージョッキーズ」の略称。
毎年8月(※)にJRA札幌競馬場で開催される騎手対抗戦である(※コロナの影響で2020、2021年は中止)。
JRA代表の7名に地方競馬代表1名、海外からの招待騎手6名を加えた計14名が4戦に騎乗して争う。着順に応じて獲得できるポイントが決められており、その合計点を個人部門、チーム部門(JRA選抜とWAS選抜)でそれぞれ競い合う。
獲得ポイントのルールは以下の通り。
個人部門の優勝者には賞金300万円!
これは賞金6000万の競走を勝った場合の騎手の取り分(5%)に相当する額であり、各レースでの賞金も合わせると札幌記念(1着7000万円)を勝つのと同じくらいの実入りになる。
なお、騎乗馬は変則的な抽選で決められる。不公平をなるべく小さくするため、ハンデキャッパーが出走馬の実力をランク付けする(A~Dの4段階)。各騎手、A~Dの馬にそれぞれ1頭ずつ騎乗することになる。
2024年の出場予定騎手
2024年の出場予定騎手は以下の通り。
JRA選抜
横山典弘(本年の日本ダービー勝利騎手)
松山弘平(前年度MVJ)
C.ルメール(6月23日時点の勝利度数関西1位)
戸崎圭太(6月23日時点の勝利度数関東1位)
川田将雅(選考委員会で選出)
武豊(選考委員会で選出)
坂井瑠星(勝利数上位)
WAS選抜(地方・海外)
吉村智洋(兵庫・地方競馬JCS≒予選で優勝)
チャクイウ・ホー(主な騎乗国=香港・ゴールデンシックスティの主戦騎手)
ダミアン・レーン(豪・リスグラシューでGⅠを3勝、タスティエーラで日本ダービー勝ちなど)
ジョアン・モレイラ(ブラジル・2015年の優勝者。「雷神」「マジックマン」の異名)
タイグ・オシェア(UAE・今年のドバイGS、ドバイWCを制し短期免許でも来日)
デルフィンヌ・サンチアゴ(仏・日本初騎乗の女性騎手。昨年は66勝を挙げリーディング12位)
カリス・ティータン(香港・今シーズンのリーディング2位。19年WASJに出場して3位。)
馬券に生かせる枠順傾向
さて、ここからは実戦的な話を。
このWASJだが、札幌に舞台を移してからの7回、対象28戦では(芝ダート問わず)明らかに外枠有利の傾向が見られている。
表の通り1枠は連対がなく、最多勝利の7枠は単回収率198%。6枠も複回収率180%となっている。
こうなる理由としては、
1.開催後半で芝はインが基本的に悪い
2.名手が集まって「タイトな競馬」になり、内の馬は進路がないorストレスが大きい
などが考えられる。
もう一つ、忘れてはいけないデータは「WASJ男」の存在だ。
武豊騎手が6割近い複勝率に単回収率140%、複回収率197%という圧巻の成績を残している。今年も大注目だ。
もう少し大づかみな傾向でいうと「外枠のJRA所属騎手」が高回収率を残す。地方と海外から名手を集めたとは言っても、なんだかんだでホームアドバンテージがモノを言う。実際、チーム戦は7年いずれも「JRA選抜」が勝利している。
歴代優勝者と枠順抽選
2015年、当地での第1回を優勝したモレイラ騎手が引いた枠順は
1戦目=6枠10番
2戦目=5枠8番
3戦目=7枠12番
4戦目=8枠13番
だった。前記のように騎乗馬の能力はなるべく均一化するように作為されているが、枠順抽選は運否天賦。そして外枠有利の傾向が顕著なのだから、当然外枠を多くツモれた騎手が有利になる。
他の年も見てみよう。
2016年優勝 Mデムーロ
1戦目=8枠13番
2戦目=7枠12番
3戦目=7枠12番
4戦目=7枠11番
2017年優勝 Eダシルヴァ
1戦目=4枠6番
2戦目=5枠8番
3戦目=6枠10番
4戦目=8枠13番
2018年優勝 Cルメール
1戦目=5枠8番
2戦目=3枠3番
3戦目=3枠3番
4戦目=7枠11番
2019年優勝 川田将雅
1戦目=8枠13番
2戦目=3枠3番
3戦目=7枠12番
4戦目=7枠11番
2022年優勝 武豊
1戦目=7枠12番
2戦目=6枠9番
3戦目=除外(6ポイント)
4戦目=7枠12番
2023年優勝 岩田望来
1戦目=6枠10番
2戦目=2枠2番
3戦目=3枠3番
4戦目=1枠1番
去年の岩田望騎手を除き、おおむね外枠を多く引いた騎手が優勝していると分かる。16年、19年、22年などは特にそうだ。
異例だった昨年も岩田騎手の56ポイントに対し、2位キング騎手が8枠14番(1着)、外枠発走(2着)、6枠10番(8着)、6枠9番(競走中止)で55ポイント。最終戦の競走中止がもし「8着以内」なら順位は入れ替わり、やはり「外枠を多く引いた騎手の優勝」となっていた。
以上見てきたように、WASJで優勝するために大事なのは騎手の技量と騎乗馬の質だけではない。いかに外枠を引くかの運が重要だ。
もし優勝者を予想しろと言われれば、まずは各騎手の当たった枠順を確認する。その上で 武豊騎手>ほかJRA騎手>海外・地方騎手 という序列も念頭に置きながら考えてみたい。