高松宮記念2025の概要
開催日
2025年3月30日(日)
グレード
GⅠ・4歳以上
コース
中京芝1200m
概要と歴史
春のGⅠシーズン到来を告げるスプリント決戦。前身は「中京大賞典」というレースで、1970年に高松宮宣仁親王から優勝杯を下賜されたのを機に、翌71年から「高松宮杯」の名称で新設された。回次もこの時が第1回となる。格式高い芝2000mのGⅡとして君臨し、ハイセイコー、トウショウボーイ、オグリキャップなどがこのレースを制した。
1996年に芝1200mのGⅠにリニューアルすると、初年度から三冠馬ナリタブライアンが出走したことでも話題となった(4着。勝ち馬はフラワーパーク)。1998年から現名称の高松宮記念に変更され、2000年から施行時期が3月の末に移り、以降は現行の条件に落ち着いた。
キンシャサノキセキの連覇、ロードカナロアなど名スプリンターが力を見せたレースもある一方、雨に見舞われることが多く、それに伴う波乱も珍しくない。2020年には15番人気クリノガウディーが1位入線するも降着、9番人気モズスーパーフレアが繰り上げ優勝となる事象もあった。
高松宮記念2025の登録馬
登録馬一覧
登録馬20頭
ウイングレイテスト
エイシンフェンサー
オフトレイル
カンチェンジュンガ
キタノエクスプレス
グランテスト
サトノレーヴ
スズハローム
トゥラヴェスーラ
トウシンマカオ
ドロップオブライト
ナムラクレア
バルサムノート
ビッグシーザー
ペアポルックス
マッドクール
ママコチャ
モズメイメイ
ルガル
ヴェントヴォーチェ
高松宮記念の基本データ(過去10年)
人気と配当の傾向

1番人気が【1-1-1-7】と心もとなく、2番人気【2-5-0-3】の方が優勢。以下3-6番人気が各1勝、8、9、12番人気が1勝ずつと勝ち馬はバラけている。
もともと中京芝1200mは独特の起伏(=3~4コーナーが急な下り坂)が影響して進路取りによる有利不利が大きく、しかもこの時期は雨も多い。22年には8番人気ナランフレグが、23年には12番人気ファストフォースが勝利するなど波乱は珍しくない。
平均馬連配当は7649円。最高馬連配当3万530円(19年ミスターメロディ→セイウンコウセイ)、最低馬連配当は890円(16年ビッグアーサー→ミッキーアイル)。
枠順と脚質の傾向

このレースに限らず中京芝1200mは内枠有利で、6枠から外はだいぶキツくなる。半分に割っても1-4枠が複勝率22.5%、複回収率170%に対し、5-8枠は同12.0%、複回84%と差がある。
「いや7-8枠も合計3勝、2着2回あるじゃないか」と思うかもしれないが、ここに落とし穴がある。7-8枠の好走7例はいずれも稍重~不良の道悪だった。良馬場開催時に限ると6枠から外は【0-0-0-24】、馬番でいえば10番から外が【0-0-0-27】とまるで出番なし。ひと桁馬番を狙い撃ちだ。

スプリント戦らしく脚質的にはやや前有利。ただ、良馬場に限れば4角6番手以下の馬も【1-1-3-31】で複回収率216%。決して侮れない。雨が降らなければイン前+イン差しを、雨が降ったときはイン前+外前にヤマを張るレースと言えそうだ。
前走について
重賞以外からの参戦例は3頭しかおらず【0-0-0-3】。あとはそれぞれレース別に見ていく。
かつて最重要ステップだった阪急杯がこの10年では【1-2-3-34】複勝率15.0%、単回19%、複回33%と悲惨な数字に。好走は既にGⅠ実績があった馬(ミッキーアイル、インディチャンプ、レシステンシア)がほとんどで、進んで買う組ではない。ただしクリノガウディーは阪急杯7着から15番人気1位入線だった。これを「実質1着」と考える宗派の方もいるだろう。
オーシャンS組【1-1-4-52】複勝率10.3%は勝ち馬が【0-0-0-9】と全滅。2-5着馬は【1-1-3-13】複回収率471%で、負けてきた馬が狙い目。
本番まで間隔を十分に確保できることから、近年存在感を増しているのがシルクロードS組【5-2-0-25】複勝率21.9%。こちらは5着以内【5-1-0-10】、6着以下【0-1-0-9】となっている。
国内外問わずGⅠからの直行は【3-1-2-12】複勝率33.3%とまずまず。うち、香港の短距離GⅠに限ると【3-0-2-6】複勝率45.5%とさらにアップする。香港スプリントに挑戦した日本馬だけでなく、香港所属馬にも2度の好走(15年1着エアロヴェロシティ、24年3着ビクターザウィナー)があった。
高松宮記念2025の参考レース
参考レース① スプリンターズS
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:内有利
展開:ハイペース
→ピューロマジックが前走から一転、スピードを抑えずに飛ばして逃げ、前半3Fは32.1秒。GⅠとしてもかなりのハイペースになった。離れた3番手ルガルでも32.8秒。内でじっと溜めた差し馬が恵まれたと評価する。
1着ルガルはスタートから主張して3番手。最初のコーナーまでに内ラチ沿いを取り切っていた。4角もウイングレイテストをかわすための1頭分だけ外に出し、極限までロスをそぎ落とした完璧な立ち回り。最後は12.3と鈍ったが、なんとか押し切った。鞍上のファインプレーにも助けられたとはいえ、展開がさらに向いた2-3着馬は自力で封じており、十分に強い内容だった。ようやくこの路線に王者らしい存在がでてきた。
2着トウシンマカオは中団のイン追走から直線も最内がキレイに空いて、こちらも150点くらいの競馬ができた。今日は内容的にもルガルに軍配が上がる。今後も右回りの良馬場1200mなら走ってくるだろう。
3着ナムラクレアは位置を取りにいかず、中団やや後ろでじっくり溜める。4角を出るまでは内めでやりすごし、直線は外に出していい脚を使った。好騎乗。急かさない乗り方の方が合っている。展開、馬場ともに味方した側。着順以上の強調点はない。
4着ママコチャは内めの5番手を追走。このハイペースながら序盤少しリキむロスはあった。直線は外へ出し、人気馬の中では真っ先に前を捕まえに動いたが、結果論で言えばタイミングが少し早かった。立ち回り次第で逆転もあっただろう。
7着サトノレーヴは中団、内から3頭目を回された。他の人気馬がロスなく立ち回っている中、この競馬ではツラい。0.4秒差なら大健闘の部類で、GⅠでも通用するメドが立った。
10着モズメイメイは以前ほど前に行けなくなっており、今回も後方から。結果的に奏功し、イン後ろで展開と馬場を味方につけて0.6秒差まで来た。
12着マッドクールは内に潜ることができず。もともと器用さを武器にトラックバイアスや展開を味方につけてきた馬なので、こうなってしまうと上位陣に対して力負けする。
14着ウイングレイテストは16番枠からこのペースの2番手に付けて脚を使った。さすがにバテてしまったが、着順ほど悪い負け方ではない。
16着ヴェントヴォーチェは1年半の休養明けで枠も厳しかった。今回は参考外でいい。
参考レース② 阪神C
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:内外フラット
展開:ややスローペース
→開催の最終盤だが、直線以外は案外内も生きていた。前後半34.5-34.4は1400mのGⅡにしては遅く、どちらかといえば前有利の競馬だったと評価する。
1着ナムラクレアは1ハロンの距離延長ながら引っかかるどころか、序盤は促しても徐々に後退していくくらいの追走。下りでエンジンをかけていき、直線は大外に持ち出すと右に切れ込みながらも強烈な末脚を発揮した。最近は1200mで序盤に急かすと伸びを欠く面があり、今は1400mの方が合っているように見える。
2着マッドクールは好スタートから先行策。直線は馬場の真ん中を伸びて一時先頭に立つシーンを作った。展開に恵まれた面もあるが、1400mでも問題なく走れることは証明した。
3着オフトレイルはスワンSと同様に後方でじっと折り合い専念。直線は内外に大きく広がった馬群の間隙を縫って伸びてきた。一線級相手に上がり33.2秒で迫った内容は上々。引っかかるタイプでマイルへの再延長に一抹の不安はあるが、能力そのものは高い。
5着ママコチャはほぼ促すことなく先団の外を追走。道中は少しリキみも見られた。マッドクールを追うように伸びてきたが最後は鈍っており、やはり1400mは1ハロン長い。1200mがベスト。
7着トゥラヴェスーラはいつもより前めの6番手集団インで運び、直線はマッドクールの後ろからしぶとく脚を伸ばした。衰え知らず。
15着モズメイメイは出遅れ。直線に向いた時点でイン15番手という絶望的な状況で、そこからインを突いたが最後は失速した。能力的にも距離的にもここでは厳しかった。
17着ウイングレイテストは内目を先行。直線も馬場の内目を狙って仕掛けたが案外余力がなく、最後は止まった。1200mの流れに慣れさせた分、今だとこの距離は少し長いか。
参考レース③ オーシャンS
レース映像(Youtube、JRA公式チャンネルより)
トラックバイアス:内有利
展開:ややスロー
→テイエムスパーダが押して逃げたが前後半33.7-33.4。前半下り坂の中山芝1200m重賞としてはペースが遅く、テイエム以外の前に行った組がそのまま上位を占めた。イン前有利な一戦だったと評価する。
1着ママコチャはスタート後鞍上が促して3番手へ。4角~直線の入り口あたりでペアポルックスに少し置かれたが、残り200mから川田騎手のステッキとアクションに応えて加速。ゴール前で差し切った。開幕週で馬場が良好とはいえ、勝ち時計1:07.1も優秀だった。
2着ペアポルックスは2番手追走。岩田騎手はテイエムスパーダをかわいがる心積もりだったと思うが、テイエムの方が4角で既に手応えなく後退。結果として早め先頭の形になった。最後は差されたが、相手がGⅠ馬だし、後続は2馬身離した。こちらも内容としては悪くない。
3着ウイングレイテストは2枠2番の絶好枠を生かしてインの3番手を確保。下がってきたテイエムをパスする部分以外は内ラチ沿いの経済コースを立ち回ってきた。最高の騎乗で、それ故に上位2頭とは内容に差を感じる。
4着ヴェントヴォーチェは外枠から3車線目を回って先行する形で、上位3頭に比べるとトラックバイアスの不利があった。ウインとの追い比べに敗れたのはその差。長期休養もあった8歳馬だが、まだまだ健在。
9着オフトレイルはゲートがイマイチで道中は後方2~4番手での競馬。4角も大外を回らざるを得ず、展開も馬場もさっぱり向かなかった。自身の上がりは32.8秒。力負けではない。自慢の末脚を生かす意味で中山より(直線が長い)中京の方がマシではあるが、本質的には1400mがベストだろう。